【前編】離職票が届かない! とるべき対処法を弁護士が解説
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会社を退職してから2週間。毎日ポストをチェックしているが「離職票」がいつまで経っても届かない。離職票がないので失業保険の手続きもできない……。こういった状況でお困りではありませんか?
会社を退職した際に交付される離職票は、失業保険を申請するためには必ず必要です。また、国民健康保険の加入手続きや、転職などにおいて退職を証明する資料としても必要になることがあります。退職後、いつまで経っても離職票が届かなければ、金銭的な不利益を受けることもあるので、ただ待っているだけではなく、できるだけはやく対処することが大切です。
では、離職票が届かない場合、どのように対応すれば良いのでしょうか? 離職票をめぐるトラブルについて、那覇オフィスの弁護士が詳しく解説します。
1、離職票はなぜ必要?
会社を退職するのが初めての方にとって「離職票」という言葉は聞き慣れない言葉でしょう。まずは離職票とはどんなもので、いつ必要になるのか、基本的な部分をご説明します。
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(1)離職票とは
「離職票」とは、退職の際にハローワークから交付される書類のことです。
「離職証明書」と名前がよく似ていますが、こちらは離職票の交付に先立ち、会社が雇用保険被保険者資格喪失届とともに、ハローワークに提出する書類です。
離職証明書が提出されなければ、離職票も交付されません。
離職票の交付対象となるのは、会社の雇用保険に加入していた人です。離職票には1と2があり、1にはマイナンバーや給付の振込先の金融機関などが、2には「自己都合」「会社都合」といった離職理由や、退職直前の半年間の給与などが記載されます。 -
(2)失業保険の手続きに必要
退職者は一定の条件を満たした場合、国から失業保険(失業等給付金)を受け取ることができます。
一般的にいう失業保険とは、雇用保険制度により失業後に給付される「基本手当」をさします。失業保険の申請をするためには、必ず離職票が必要です。
失業保険の受給手続きは、次のようになっています。
- 退職者がハローワークに離職票と必要書類を提出、求職の申し込み
- ハローワークが退職者に受給資格があるかどうかを確認
- 退職者は雇用保険の説明会に参加、求職活動
- 失業が認定されると、失業保険が給付
なお離職票は国民健康保険の加入手続きや、転職の際に退職を証明する資料などとして必要になることもあります。
ただし、すぐに転職や起業をすることが決まっていて、失業保険の受給が必要ない場合には、そもそも離職票を提出する必要はありません。 -
(3)失業保険は期限に注意!
失業保険には、原則として「退職日の翌日から1年間」という受給期間が定められています。
退職日から1年後にまだ受給中であっても、この期限が到来すれば打ち切られます。そのため離職票の提出が遅れれば、受け取れる失業保険の総額が少なくなってしまう可能性があるのです。
たとえば、自己都合退職の場合、次の期間内に手続きをしなければ、満額を受給することができなくなってしまいます。
- 給付日数150日:退職後3か月以内
- 給付日数90日:退職後5か月以内
離職票が届かないからと何もせずにいると、損をしてしまう可能性があるのです。
2、会社から離職票が届かないのは違法?
会社に対して離職票の発行を依頼したにもかかわらず、会社側の不備や嫌がらせで手続きが行われていない場合には、違法の可能性があります。
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(1)離職証明書の発行
従業員が退職した場合、会社は退職日の翌日から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」をハローワークに提出しなければいけません(雇用保険法 第7条・雇用保険法施行規則 第7条第1項)。
ただし、従業員(59歳以上である場合を除きます)が離職票の発行を希望しないときは、離職証明書を添えないことができます(雇用保険法施行規則 第7条第2項)。
また、雇用保険法施行規則 第16条では、以下のように規定されています。
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事業主は、雇用していた被保険者が離職したことにより被保険者でなくなった場合、その者が離職票の交付を請求するため離職証明書の交付を求めたときは、これを交付しなければならない。ただし、第7条第1項の規定により離職証明書を提出した場合は、この限りでない。
つまり会社は、従業員が離職票の発行を希望しないときを除き、離職証明書をハローワークに提出しなければならず、また、従業員から要望があった場合にはハローワークに提出している場合を除き、従業員に交付しなければなりません。
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(2)手続きをしない場合は違法
会社が離職証明書をハローワークに提出すると、ハローワークが離職票を交付し、会社を経由して退職者に届けられます。そしてハローワークから離職票が届いた場合には、退職者に離職票を渡さなければいけません。
会社がこれらの手続きを怠った場合には、雇用保険法違反にあたるとして、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります(雇用保険法第83条)。
なお、手続きに多少の時間がかかるため、会社がすぐに手続きをしても実際に退職者の手元に届くのは、退職後10日〜2週間以内が目安となります。 >後編はこちら
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