不当解雇を証明する証拠とは? 証拠を収集できないときの対処法も解説
- 不当解雇・退職勧奨
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沖縄労働局は、那覇市をはじめ県内4か所に総合労働相談コーナーを設けており、職場での悩みやトラブルについて無料で相談をすることができます。
厚生労働省が発表している「令和元年度・個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、労働トラブルにおける相談のなかで、解雇は3番目に多い相談だったことがわかります。
会社が従業員を解雇するためには、厳格な決まりがあり簡単に行うことは認められていません。しかし、なかには、正当な理由なく一方的に解雇する「不当解雇」が行われているケースがあります。
もし、不当解雇だったと認められた場合、解雇が無効になることで従業員の資格を回復し、不当解雇によってもらえなかった賃金を請求することができます。悪質なケースにおいては、慰謝料を請求できる可能性もあるでしょう。
本コラムでは、不当解雇であることを証明するために有効な証拠や、証拠を集めることが難しい場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスの弁護士が解説します。ぜひ参考にしてください。
1、もしかして不当解雇?
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(1)不当解雇とは?
不当解雇とは、使用者が労働基準法等の法律や就業規則による規制を無視して、労働者を解雇する行為を言います。
たとえば、単純にその労働者のことを気に入らないからという理由での解雇や、十分な教育をしないままに能力不足と決めつけて解雇するなどの行為は、不当解雇と考えられます。人件費削減のためと言いながら求人募集をしているなどのケースも、適法な解雇とは言えず違法とされる可能性が高いと言えます。
解雇を言い渡されたときに、「おかしい」、「納得できない」と少しでも思った場合は、しっかりと会社側に説明を求めることが大切です。 -
(2)解雇の種類
一般的には、使用者である会社から一方的に雇用契約を解約することを「解雇」と言いますが、解雇には種類があり、大きく分けて3つに分類されます。
解雇を言い渡されたときは、どの解雇に該当するのかを、きちんと確認することが重要です。
●普通解雇
主に労働者側に起因する理由があり、労働契約を継続することが困難と判断された場合に実行される解雇です。たとえば、何度指導しても遅刻欠勤を繰り返す、会社側が対策を講じても能力向上が見られないなど、会社は努力したものの勤務を継続させるのが困難と判断された場合に行われます。
●整理解雇
会社の経営不振によって実行される解雇です。ただし、人員整理を行うことが合理的であり、解雇を回避するための努力がなされていなければ、整理解雇を行うことはできません。
●懲戒解雇
懲戒解雇は、労働者が法律に違反したり、会社の秩序を乱したりしたときに行われる解雇です。会社の商品を横領したり、重大な事件をおこしたりした場合などが考えられますが、該当するケースの詳細は会社ごとに異なり、懲戒解雇事由は就業規則などに記載されている必要があります。
2、不当解雇の証拠になり得るものとは?
不当解雇であることを主張するには、解雇が正当な理由に基づいていないことを示すもの、すなわち証拠が重要です。では、どのようなものが証拠になり得るのでしょうか。
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(1)解雇理由証明書
解雇理由証明書は、会社が解雇した理由を詳細に記載した書類です。会社に発行する義務はありませんが、労働基準法第22条に規定されているように、労働者から発行を要求した場合は、会社に発行の義務が生じるため、会社はそれを拒否することはできません。
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(2)解雇に関する資料
「○月○日に解雇する」と書かれた解雇通知書、実際に解雇を通知したメールなど、解雇に関する資料も、不当解雇の立証に役立つ証拠となります。
また、過度な退職勧奨(退職をすすめる行為)があった場合は、それらを示す証拠を残しておきましょう。「役に立たないから早く辞めろ」などのパワハラ発言や、あからさまにノルマを増やす(減らす)などがあった場合は、退職強要があったとみなされる可能性が高いと言えます。 -
(3)解雇理由が事実と異なることを証明する資料
解雇理由証明書などに記載されている解雇理由が事実と異なる場合は、そのことを証明するための資料も重要です。
●勤務態度などが理由とされた場合
業務日報や上司とのやり取りがわかるメール、出退勤時間が記録されたタイムカードなどが有効な証拠となるでしょう。そのほか、人事評価書や個人の成績がわかる資料も有効です。
●整理解雇だった場合
整理解雇が有効とみなされるためには、次の4つの要件を満たしている必要があります。
- やむを得ず人員削減をしているのか
- 解雇を回避するための努力をしているか
- 解雇する人は合理的な理由で選んでいるか
- 整理解雇を行うことを労働組合や従業員に説明しているか
これらを満たしていないことを示す証拠になり得るものとしては、会社の業績がわかる資料や求人情報があげられます。
●懲戒解雇だった場合
懲戒解雇に関する要件が示された就業規則、事実を否定できる内容のメールや、録音データなどが有効な証拠となり得ます。 -
(4)あわせて用意しておきたい証拠
不当解雇だった場合は、解雇されなければ得られたであろう賃金について請求することができます。また、未払いの残業代がある場合は、あわせて残業代も請求することが可能です。
そのため、上記の証拠と一緒に、就業規則や雇用契約書、給与明細、タイムカードといった賃金に関する資料もそろえておくと良いでしょう。
3、証拠を集めることができないときは弁護士に相談を
不当解雇は、基本的に解雇に相当する具体的な事実(解雇事由)があることを会社側が証明する必要がありますが、労働者は会社側の解雇事由の証明を妨げるために、会社側の主張と異なる事実を主張したり、証拠を提出したりする必要があります。
しかし、状況によっては集めにくい資料もあるほか、会社の協力を得られる可能性も低いでしょう。また、不当解雇であることを隠匿しようと、証拠となり得る情報を会社が隠すといった悪質なケースも考えられます。
そういった場合は、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、代理人として会社と交渉し、証拠の提出を求めることができます。弁護士が代理人となることで、事を荒立てたくない会社側が交渉に応じることも少なくありません。
また、交渉に応じず証拠の提出を拒むような場合は、弁護士は証拠保全の手続きを利用するなどによって、証拠を収集します。
証拠保全とは、あらかじめ証拠を調べておかなければ、その証拠を使用することが困難になる事情があると認められた場合に、裁判所が証拠調べをする手続きのことで、民事訴訟法第234条に規定されています。
簡単に言うと、タイムカードなどの証拠を会社が開示してくれない場合に、裁判所から証拠の提示命令を下してもらうための手続きです。強制力はありませんが、裁判所からの命令には応じるケースが多いでしょう。
証拠保全をする場合は、まず文書を所持する者の居所又は検証物の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所に、証拠保全が必要な理由などを明記した証拠保全申立書を提出します。申立時は、法人の資格証明書や収入印紙、場合によっては疎明資料(なぜ証拠保全が必要なのかを示す資料)が必要です。
これらの手続きを個人が行うには、法的な知識も必要となるため、非常に難しいと言わざるを得ません。弁護士に依頼することで、申立書の作成はもちろんのこと、証拠保全実施時の立ち会いも依頼できます。
4、不当解雇を疑ったときにとるべき対応
会社から解雇を告げられれば、動揺してしまうでしょう。まずは落ち着いて、ここでご紹介した対応を取って下さい。
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(1)解雇理由証明書を請求する
まずは、解雇理由証明書を請求しましょう。請求するときは口頭ではなく、記録に残るメールや書面での通知を要求します。会社が応じない場合は、解雇理由証明書を請求する旨を内容証明郵便で送付し、請求した事実を証明できるようにします。
なお、発行された場合は、具体的な理由が明示されているか、事実と異なる内容ではないかという点をしっかりと確認しておく必要があります。 -
(2)退職届を出さない
解雇の場合は、原則として退職届を提出する必要ありません。退職届を出すと、会社都合による解雇ではなく、自己都合による退職という扱いになります。
たとえば、懲戒解雇であれば労働基準法20条1項但書の即時解雇となり、解雇予告手当の支払を受けられない等の厳しい扱いを受ける場合もあります。そのため、会社が温情的に退職届を出すよう促し、自主退職として扱うケースもあります。
しかし、不当解雇の可能性があるにもかかわらず、退職届の提出を求められた場合は、安易に退職届を出さないようにしましょう。解雇理由証明書を発行してもらえないばかりか、そもそも不当解雇であることを訴えるのが難しくなります。
5、まとめ
会社から解雇を告げられたものの、解雇理由などに納得ができず不当解雇を疑う場合は、証拠をそろえるために早急に動き出すことが重要です。しかし、たとえ証拠を集めたとしても、労働者が会社という組織に立ち向かうのは、非常に勇気がいることであり、精神的な負担も大きいものでしょう。また、会社側が、まったく聞く耳を持たない場合や、証拠をそろえることができない場合、泣き寝入りするしかないと思うかもしれません。
そういったケースでも、労働者の強い味方として、最後までサポートできるのは弁護士です。
不当解雇を疑う場合は、ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスまでご相談ください。
しっかりとヒアリングしたうえで、どのように交渉をすすめていくべきかを検討し、状況に応じたサポートを行います。会社との交渉も、もちろんお任せください。最善の結果を得られるよう、最後まで徹底的に戦います。
泣き寝入りすることなく、まずは那覇オフィスの弁護士に、お話を聞かせてください。ご相談、お待ちしています。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています