【前編】解雇予告は労働基準法では問題ない?不当解雇にあたるケースとは?

2019年03月28日
  • 不当解雇・退職勧奨
  • 解雇
  • 労働基準法
  • 弁護士
  • 那覇
【前編】解雇予告は労働基準法では問題ない?不当解雇にあたるケースとは?

沖縄県の完全失業率は全国でもトップクラスです。総務省の調査によると、平成30年4月は全国の2.5%に対し、沖縄県は3.1%にものぼりました。

那覇市でも、一度失業すると新たな就職先を見つけるのは簡単ではありません。
ですが上司に呼び出され「仕事に能力が見合っていない」「来月末で辞めてくれ」と、突然解雇を予告されることは、現実にあり得るのです。
ただし中には不当解雇にあたることもあります。

では労働基準法では解雇予告はどのように定められて、どんなケースが問題なのでしょうか?那覇オフィスの弁護士が解説します。

1、解雇とは?

解雇とは会社側が労働者の意思に関係なく、一方的に労働契約を終了させることです。
一般的には「クビ」という言葉もよく使われます。

解雇には種類があり、労働者の人生に大きな影響を及ぼすため、それぞれ行う場合には厳しい決まりが設けられています。

  1. (1)解雇の3つの種類

    解雇には以下の3つがあります。

    • 普通解雇
    • 整理解雇
    • 懲戒解雇

    「普通解雇」は、勤務態度が悪かったり著しく勤務成績が低かったりするなど、適正や能力の不足を原因とした解雇です。
    たとえば労働者の度重なる無断欠勤や遅刻、暴力などが考えられますが、誰がみても当然と思えるほどの合理性が必要です。

    「整理解雇」は、いわゆるリストラです。会社の経営不振や合理化などのために、人員を整理する目的で行われます。
    整理解雇には4つの要件が定められており、簡単にリストラできないように厳しく制限されています。

    「懲戒解雇」は、労働者が会社の金品を盗んだり刑事事件を起こしたりするなど、会社の規律に違反したことに対する懲戒処分としての解雇です。
    一般的に退職金は支給されません。

    なお懲戒解雇には実際には懲戒処分対象であっても、本人が反省しているなどの理由から依願退職の形をとる「諭旨解雇」も含まれることがあります。
    退職金が支給されることが多いほか、再就職への影響も抑えられます。

  2. (2)会社は従業員を簡単に解雇できない

    「今日でクビ」と言われると労働者は収入源を失い、今後の生活に困ります。
    すぐに再就職ができるとも限りません。

    そこで会社の都合で簡単に労働者を解雇できないよう、法律で様々な制限を設けています。

    労働契約法16条では、以下に当てはまる場合には解雇を無効とするとしています。
    「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」

    たとえば「あいつは気に食わない」といった程度での解雇は認められません。
    勤務態度の悪さが問題となった場合でも、指導しても改善の見込みがなく、誰から見ても当然と思えるケースでなければ解雇できません。
    また整理解雇も、あらゆる手を尽くしても本当に人員整理が避けられないのかが慎重に判断されます。

    解雇に合理性がなければ、会社は不当解雇をしたとして訴えられる可能性があります。

2、労働基準法が規定する「解雇予告」とは?

労働基準法では「○月○日に解雇する」などと、解雇を事前に予告するように定めています。
ただし解雇予告をしなくてもいいケースもあります。詳しくみていきましょう。

  1. (1)使用者は解雇の予告をしなければならない

    労基法20条では、解雇予告を以下のように規定しています。
    「使用者は労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前にその予告をしなければならない」
    「30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」

    30日分以上の平均賃金を支払うケースは、即時解雇が想定されます。
    また予告された時期が30日未満の場合、30日に満たない日数分だけ「解雇予告手当」を支払う必要があります。

  2. (2)天災では例外的に予告しなくてもいい

    大地震など天災が起きた場合には、会社の運営を続けること自体が難しくなることがあります。
    その場合には、どうしても解雇しなければいけなくなることもあるでしょう。

    労基法では天災やそのほかやむを得ない事情があり、事業継続ができなくなった場合には、解雇予告や解雇予告手当の支払いがなくても労働者を解雇できるとしています。
    ただし、労働基準監督署長の許可が必要です。

    また懲戒解雇についても、労基署の許可があれば解雇予告や手当は不要です。

  3. (3)試用期間など雇用形態によっては予告不要

    解雇予告は、社員など継続的に雇用されている労働者の生活を守るための仕組みです。
    そのため試用期間中など、身分が安定していない労働者は適用の対象外となっています。

    具体的には以下の労働者です。

    • 日雇い労働者
    • 2ヶ月以内の期間を定めて雇用された労働者
    • 季節的業務で、4ヶ月以内の期間を定めて雇用された労働者
    • 試用期間中の労働者

    ただし一定期間を超えて引き続き雇用されている場合には、解雇予告や手当の適用対象に変わります。
    >後編はこちら

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています