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入社してすぐ産休・育休の取得を希望する従業員に企業がとるべき対応

2023年06月15日
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入社してすぐ産休・育休の取得を希望する従業員に企業がとるべき対応

沖縄県が令和4年6月に公表した「令和2年国勢調査 就業状態等基本集計結果」によると、平成27年調査結果と比較すると女性の労働力率は3.9ポイントの上昇がみられます。なかでも、夫婦ともに就業者という世帯は4.4ポイント上昇していることから、企業側としても、女性従業員のライフスタイルの変化に対応し、勤務環境を整備していくことは喫緊の課題といえるでしょう。

とはいえ、人材不足を補うために採用した社員が、入社後すぐ産休を取得したいと申し出た場合、企業は、産休中の代わりの人材を募集・採用するなどの対応が必要になるため、業務や費用の負担が生じる可能性が高く、企業側にとっては頭の痛い問題となりえます。

本コラムでは、入社したばかりの従業員が、すぐに産休・育休を取得する場合に、企業がとるべき正しい対応方法について、ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスの弁護士が解説します。

1、押さえておきたい産休・育休の基礎知識

はじめに「産休」と「育休」の基本的な知識を確認していきましょう。

  1. (1)産休の基礎知識

    産休とは、「産前休業」と「産後休業」のことをいいます。産休は、母体の健康を保つために設けられた「働く女性すべて」に認められる制度です。

    「産前休業」は、出産予定日より6週間前(双子などの多胎妊娠であれば14週間前)からであれば開始日を自分で決めることができます。産休は女性の請求によって取得することができますが、請求せずに働き続けることも可能です。しかし女性が産前休業を請求したときは、必ず休業させなければならないとされています

    一方「産後休業」は、出産日から8週間後まで、女性の請求がなくても必ず取得させなければならないとされる休みです。そのためこの期間は、女性が働きたいと申し出たとしても企業側は必ず休業させなければなりません。ただし、出産後6週間を経過すれば、女性の請求によって、医師が支障はないと認めた業務に就かせることは可能とされています。

  2. (2)育休の基礎知識

    育休とは、「育児休業」のことをいいます。育休は、育児をしながら働く方が生活と仕事を両立できるようにするために設けられた制度です。

    「育児休業」の期間は、原則として子どもの1歳の誕生日の前日までとされています。
    ただし保育所に入所できないといった事情があるケースでは、子どもが1歳6か月になるまで認められるなどの例外もあります。
    なお育休は、女性に限られず男性も取得することができます。

    ただし働く方すべてに取得が認められるというわけではなく、日雇い労働者や期間雇用者で一定の要件を満たしていない労働者は育休の取得が認められていません

    期間雇用者における一定の要件とは、次の通りです。

    • 同一の事業主に継続して1年以上雇用されていること
    • 子どもの1歳の誕生日後も引き続き雇用されることが見込まれること
      (ただし、子どもの2歳の誕生日の前々日までに労働契約が満了して更新されないことが明らかになっている場合は除かれます。)


    なお、「労使協定」を結ぶことによって、次に該当する労働者についても、育休の対象外とすることは可能です。

    • 入社1年未満
    • 1年以内に雇用関係が終了することが明らかな場合
    • 週の所定労働日数が2日以下

2、入社してすぐの産休・育休取得は拒否できる?

では入社後すぐ産休・育休の取得を請求する従業員に対して、企業側が取得を拒否することはできるのでしょうか。

  1. (1)産休の場合

    産休は、働く女性すべてに認められる制度です。したがって入社して間もない従業員でも、産前休暇の取得の請求があれば企業側が拒否することはできません。また産後休暇の取得は、請求がなくても認めなければなりません。

  2. (2)育休の場合

    育休は、すべての従業員が取得できる制度というわけではありません。
    前述したように、日雇い労働者や一定の要件を満たしていない期間雇用者については、企業は育休の対象外になることを理由に取得を拒否することができます。

    また、企業が労使協定で「雇用期間を1年未満の労働者は、育休の対象外とする」旨を定めていれば、入社1年未満の労働者についても育休の取得を拒否することは可能です。

3、妊娠・出産による解雇や不利益取り扱いは禁止

入社した社員が妊娠・出産したことや、産休、育児休業の申し出をしたこと、取得したことを理由にした、解雇や不利益取り扱いは禁止されています。

  1. (1)解雇が禁止されるケース

    労働基準法第19条では、女性労働者について産前産後の休業期間中(産前6週間から産後8週間)と、休業期間終了後30日間は原則として解雇できないと規定しています。

    また、男女雇用機会均等法第9条第1項では、就業規則や労働契約に「結婚・妊娠・出産」した場合は、退職する旨を定めることは禁止されています。そして、同法第9条第4項では、妊娠中、出産後1年を経過していない女性労働者の解雇は無効とする旨規定されています。
    ただし、無効とされるのは「妊娠・出産またはこれらによる休業」を理由とした解雇に限られます。

    したがってこれらを理由としない解雇であることを証明できれば、妊娠中または産後1年以内であっても解雇は認められることになります。

  2. (2)不利益取り扱いに該当する可能性がある行為

    男女雇用機会均等法第9条第3項では、解雇だけでなく、妊娠・出産を理由とした不利益取り扱いを禁止しています。
    不利益取り扱いにあたる可能性がある行為としては、次のようなものが挙げられます。

    • 期間雇用者の契約を更新しない
    • 正社員に、パートやアルバイトなどの非正規社員になるよう強要する
    • 降格人事を行う
    • 業務に従事させない
    • 理由のない減給、不利益になる方法で賞与などを算出する
    • 人事考課で不利益な評価をして昇給させない
    • 不利益になる配置転換を行う など


    妊娠・出産などを機に、上記のような不利益取り扱いを行い、厚生労働大臣からの勧告を受けたものの無視すれば、その事実を公表されることがあります。
    また、厚生労働大臣から報告が求められているのにもかかわらず、報告を怠ったり虚偽の報告をしたりすれば、その企業には20万円以下の過料が科せられます。

4、企業がとるべき対応

採用したばかりの従業員が、入社後すぐに産休・育休を取得したいと申し出た場合、企業としては法の規定に従い、しかるべき休業を取得させる必要があります。では、すべての社員が長く活躍できる環境を整えるためには、どのようにすれば良いのでしょうか。

  1. (1)妊娠・出産に関する社内制度を整備する

    入社後、すぐ産休に入る従業員がいるときには、企業側は一時的には人員を補充するなどの対応が必要になります。しかし、長期的にみれば、女性がライフスタイルに合わせて柔軟に働くことができるよう妊娠・出産に関する社内の制度を整備する機会にもなりえます。たとえば、リモートワークを導入する、短時間正社員制度を導入するなども一案です。

    従業員が安心して妊娠・出産し、再度職場に戻れるような仕組みつくりを行うことは、転職・離職を防ぎ優秀な人材を確保できることにつながることでしょう

  2. (2)労使協定を締結する

    産休は働く女性全員が対象となり、対象外とする方法はありません。
    ただし育休は、「労使協定」を結べば、「入社後1年未満の労働者」について対象外にすることが可能です。
    そのため使用者は労働者とよく話し合った上で「労使協定」を締結して、育休の対象外となる旨を定めるという対応策があるといえるでしょう。また、採用の際にも、しっかりと制度について説明し、理解を得ておくことも大切です。

  3. (3)弁護士に相談する

    従業員の妊娠・出産に関しては、産休・育休はもちろん、就業制限や時短勤務など押さえるべき法律は多岐にわたります。しかし、このような法律知識を理解した上で、社内の制度を整備することは容易ではありません。そのため法律の専門家である弁護士に相談しながら、社内の制度づくりを進めることがおすすめです

    また、従業員とトラブルになってしまっているような場合には、弁護士が間に入ることで、冷静な協議ができるほか、法的な解決策を講じることができるでしょう。

5、まとめ

本コラムでは、入社後すぐに産休・育休を取得したいと従業員が申し出た場合の対応方法について解説しました。
企業としては、労使協定を結んで入社1年未満の社員について育休の対象外とすることはできます。しかし、長期的に優秀な人材を確保するためには、従業員の妊娠・出産などのライフスタイルの変化に柔軟に対応できる社内制度をつくることが重要になるでしょう。

ベリーベスト法律事務所では、ニーズに応じて選択できる顧問弁護士サービスを展開しています。
那覇オフィスの弁護士が、沖縄県内の経営者の方やご担当者の方を全力でサポートします。ぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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