資源ゴミの持ち去りで逮捕? 那覇市の条例と逮捕されるケースを解説
- その他
- ゴミ
- 持ち去り
地方自治体が行っている資源ゴミ収集によって集積されたゴミの中には、換金できるものや、そのまま使える家具などもあります。しかし、たとえゴミとして捨ててあるものだとしても、持ち去りは違法行為です。沖縄県那覇市では、資源ゴミの持ち去り行為について取り締まりを続けているものの、違反者は後を絶たないそうです。
多くの自治体で資源ゴミの持ち去りを禁じており、持ち去り行為には罰則が規定されていることがほとんどです。では、那覇市ではどのような条例が定められており、どのような罰則があるのでしょうか。
本コラムでは、ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスの弁護士が、那覇市で資源ゴミを持ち去った場合の罰則や逮捕された場合の流れについて解説します。
1、那覇市の条例のおける罰則
那覇市では、「那覇市廃棄物の減量化の推進及び適正処理に関する条例」で資源物の持ち去りを禁じています。
条例に違反した場合は、勧告および命令を行い、従わない場合は過料処分が行われます。しかし、持ち去り行為は後を絶たず、平成30年1月には罰則が強化されて、過料の上限額が1万円から5万円に引き上げられました。
過料処分1回目: 1万円
過料処分2回目: 3万円
過料処分3回目: 5万円
また、持ち去りに際し、那覇市の職員等の指導に従わず暴力を加えたり、他人の家に侵入したりした場合は、条例違反だけではなく、公務執行妨害罪や住居侵入罪に問われるおそれがあります。
2、那覇市の条例の禁止事項
那覇市の条例では、どのようなゴミを持ち去ることが禁じられているのでしょうか。具体的なゴミの種類や、ゴミの状態を解説します。
-
(1)那覇市条例により持ち去りが禁止される資源ゴミ
那覇市では、「那覇市破棄物の減量化の推進及び適正処理に関する条例」によって、持ち去りを禁じている資源化物(資源ゴミ)を以下の様に規定しています。
- 紙
- 缶
- びん
- ペットボトル
- 布
- 草木
-
(2)条例によって禁じられているのは所定のゴミ置き場にあるもの
那覇市の条例では、所定のゴミ置き場に置かれている資源化物を、市、または市長が指定した者以外が収集、運搬する行為を禁じています。
ここで言う「所定のゴミ置き場」とは、市が資源化物や家庭ゴミを収集するために指定した、ゴミの排出場所のことを指します。
また、原則として資源化物を収集できるのは、那覇市の職員と市が委託している業者に限られ、収集のために使用する車両には事業者名が表示されているとしています。 -
(3)監視業務の強化
那覇市では、ゴミの持ち去りを監視するために、警察官OBを採用するなどし、持ち去り監視業務を行っています。
公開されている指導件数をみると、平成27年は514件、平成28年は445件で、平均すると1日1件以上指導している計算になり、多くの持ち去り行為があることがわかります。 -
(4)持ち去りを禁じる命令や勧告に従わない場合
那覇市が資源ゴミの持ち去りを発見して指導、勧告したにもかかわらず持ち去りを行った場合は、科料処分が科されることがあります。科料処分は、過料処分を受けたことのある回数によって、3段階に定められています。
なお、過料の支払いに従わない場合は、滞納処分が実施されます。実際に、平成28年には過料4万円を滞納した者が所有する自動車にタイヤロックを行い、徴収した事例が報告されています。
3、条例違反以外に成立する可能性がある犯罪
資源ゴミの持ち去りは条例違反だけでなく、状況によっては刑法上の犯罪が成立し刑事罰を科される可能性があります。
●公務執行妨害罪
那覇市のゴミ持ち去りを監視している職員や指導員に対して暴力をふるったり、暴言をはいたりした場合は、公務執行妨害罪に問われる可能性があります。
公務執行妨害は、刑法95条によって規定されている犯罪です。公務執行妨害の法定刑は、3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金です。条例違反より非常に重い罪が科せられます。
●窃盗罪
敷地内に置かれている資源ゴミを持ち去った場合は、窃盗罪に問われる可能性があります。
窃盗罪は刑法235条で規定されている犯罪で、法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
●住居侵入罪
資源ゴミを持ち去るために敷地内に無断で侵入すると、刑法第130条で規定されている住居侵入罪に問われるおそれもあります。法定刑は、3年以上の懲役または、10万円以下の罰金です。
4、逮捕された場合の流れ
ゴミの持ち去り行為によって逮捕されてしまった場合、どうのように手続きが進むのでしょうか。
●警察官・検察官による取り調べ
逮捕されると、警察官によって最長48時間、その後、検察官によって最長24時間の身柄拘束を伴う取り調べが行われます。この間、弁護士以外は家族であっても接見することはできません。身柄拘束中は、警察署内の留置場に身柄を留め置かれます。
●勾留と起訴・不起訴の決定
検察官は取り調べの結果、さらなる捜査が必要だと判断した場合には、裁判官に対して勾留請求を行います。勾留請求が認められる原則10日間、延長が請求されるとさらに10日間、最長で20日間に及ぶ身柄拘束が続きます。
検察官は、捜査や取り調べを行いながら起訴するかどうかを判断します。
●刑事裁判
起訴されると、刑事裁判が開かれて有罪か無罪かを判断されます。日本の刑事裁判の有罪率は99.9%を超えるとも言われており、起訴された場合は有罪判決を免れることは容易ではありません。
なお、不起訴となれば、刑事裁判は開かれず、罪に問われることはありません。
5、逮捕によって生じる不利益とは
資源ゴミの持ち去りをして逮捕された場合、どのような不利益が生じるおそれがあるのでしょうか。
●長期間の身柄拘束
逮捕されてしまうと、逮捕後の72時間(3日間)、勾留された場合は最長で20日間の身柄束が続く可能性があります。さらに、起訴されて保釈請求が認められなければ刑事裁判が終了するまで身柄の拘束が続くことになります。その期間は、数か月から半年に及ぶことも少なくありません。もちろん通勤や通学が難しくなりますので、退職や退学を迫られる可能性も否定できません。
●刑事裁判で有罪となったら前科がつく
有罪判決が言い渡されると、それがたとえ罰金刑であったとしても「前科」がつきます。前科がつくと、特定職種には一定期間つくことができません。また、海外渡航が制限されることもあるほか、検察庁が管理している犯罪の記録には生涯にわたって記録されることになります。
●執行猶予がつかなければ刑務所に収監される
執行猶予がつかない懲役刑や禁錮が言い渡された場合は、刑務所に収監されることになります。資源ゴミの持ち去りによる窃盗罪や公務執行妨害罪では、実刑判決が言い渡されることは少ないと言えますが、前科がある場合や行為が著しく悪質な場合は実刑判決もあり得ると心得ておくべきでしょう。
6、まとめ
那覇市で資源ゴミを持ち去った場合、那覇市の条例によって指導、勧告が行われます。それらに従わない場合は、科料処分が言い渡されますが、従わない場合には滞納処分が実施されることもあります。
また、軽い気持ちでゴミを持ち去ったとしても、持ち去る際に他人の敷地内に立ち入るなど刑法にふれるような行為をしてしまえば、逮捕されるおそれもあるのです。
資源ゴミの持ち去り行為によって、逮捕されそうだと不安を感じている場合や、警察に呼び出されているという状況であれば、速やかに弁護士に相談するのが得策です。
弁護士は経緯を伺った上で、取るべき対応について助言を行います。また、家族が逮捕されてしまったというようなケースでは、迅速に接見を行い、早期の釈放を目指し弁護活動を行います。
ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスには、刑事事件の対応実績が豊富な弁護士が在籍しています。刑事事件は初期の対応が非常に重要です。警察署へ同行することも可能なので、まずはご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|