私有地への無断駐車を解決したい! トラブル回避のための注意点と対処法
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沖縄県の公表情報によると、沖縄県における自動車の保有車両数は、令和2年6月時点で116万9572台でした。車を保有すると駐車する場所を確保しなければいけませんが、迷惑な「無断駐車」によってトラブルに発展することも少なくありません。
那覇市のインターネット相談窓口に、路上駐車によるトラブルの相談が寄せられているように、自治体などに助けを求めようと考えるのが一般的です。
ところが、公道ではなく私有地や自分が借りている駐車枠に誰かが無断駐車をしている場合は、自治体や警察に通報しても、取り締まりや撤去などの強制的な対応は望めないでしょう。
とても迷惑な行為なのに警察や自治体が取り締まってくれないのでは、どのように解決すればよいのか困ってしまうはずです。
本コラムでは、無断駐車への法的な対策について、那覇オフィスの弁護士が解説します。
トラブルを未然に防ぐために気をつけておきたいポイントも併せて解説するので、無断駐車対策に役立ててください。
1、無断駐車はどのような違法行為になるのか?
無断駐車は法律に違反する行為です。
ただし、駐車されている場所によって、どのような違法行為になるのかが変わります。
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(1)公道での駐車① 道路交通法の駐車・駐停車違反
自宅前の道路や歩道に無断で車がとめられている、狭い道や曲がり角などに車がとめられていて通れないといったケースでは、道路交通法第44条の「駐停車違反」または第45条の「駐車違反」に該当する可能性があります。
駐車禁止・駐停車禁止の標識や表示が設置されている場所は「指定禁止場所」に該当しますが、そのほかにも道路交通法上当然に駐車が禁止される「法定禁止場所」があり、標識・表示がない場合でも駐停車が禁止されている場所が存在します。
無断駐車で非常に多いのが、道路交通法第45条第1項の法定駐車禁止場所の一つ「自動車の格納のため道路外に設けられた施設または場所の出入り口から3メートル以内の部分」に該当するケースです。
車庫から3メートル以内の場所は、たとえ自分の家の前で自分の車を駐車していた場合でも違反にあたります。
●「交通反則通告制度」の対象
駐車禁止・駐停車禁止違反は、行政手続きを先行して行い、反則金を支払えば刑事責任が免除される「交通反則通告制度」の対象になっています。つまり、反則金を納付すれば刑罰が科せられることはありません。
駐車禁止・駐停車禁止違反の場合の反則金は、場所(駐停車禁止場所か駐車禁止場所か)や行為(駐停車違反か放置駐車違反か)、車両等の種類(大型車、普通車、二輪車、原付)などによって異なりますが、普通車の場合は1万円~1万8千円です。
ただし、悪質な場合は刑事手続きが進められ、刑罰が科せられる可能性もあります。駐車禁止・駐停車禁止違反に対する罰則は、車両を離れて直ちに運転できない状態(放置駐車違反)であれば15万円以下の罰金、そのほかの場合は10万円以下の罰金です。
●「放置違反金制度」の対象
駐車禁止・駐停車禁止違反は「放置違反金制度」も対象です。
放置駐車であることを確認する標章が貼付されたものの運転者が出頭しない場合、車両の使用者(通常、自動車検査表の使用者欄に記載ある人)に対して、弁明通知書と仮納付書が送付されます。標章の取り付けから30日以内に反則金の納付か、公訴提起がなければ納付命令が出され、車両の使用が制限されます。
その後も納付しなければ、車検を受けることもできなくなります。 -
(2)公道での駐車② 車庫法違反
公道における迷惑駐車が、道路交通法に定められた駐車禁止・駐停車禁止違反ではなく「車庫法」に違反するケースもあります。
車庫法とは、正しくは「自動車の保管場所の確保等に関する法律」と言い、道路を自動車の保管場所としないように義務付けています。
車庫法第11条は「何人(なんぴと)も道路上の場所を自動車の保管場所として使用してはならない」と定め、次の行為を禁止しています。- 自動車を道路上の同一の場所に引き続き12時間以上駐車する行為
- 自動車を夜間に道路上の同一の場所に引き続き8時間以上駐車する行為
車庫法に違反する場合は、交通反則通告制度が適用されません。
つまり、切符処理を受けることなく、通常の刑事事件として刑罰が科せられます。
罰則は、道路を保管場所としていた場合が「3か月以下の懲役または20万円以下の罰金」、長時間にわたって(同一の場所に引き続き12時間以上又は夜間に8時間以上)駐車していた場合は「20万円以下の罰金」です。
道路交通法の駐車禁止・駐停車禁止違反よりも重たい罰則が規定されており、前科がついてしまうという点でも非常に厳しく処罰される違法行為だと言えます。 -
(3)私有地への無断駐車は民法上の「不法行為」
無断駐車のなかでも、対応に困るのは私有地への駐車かもしれません。
月極め駐車場やマンションなどの契約駐車場、空き地などの私有地における無断駐車に悩まされている方も多いでしょう。
残念ながら、無断駐車の場所が私有地である場合は「道路」にあたらないため、道路交通法や車庫法が適用されません。
つまり、私有地への無断駐車を罰する法律は存在しないのです(但し、道路として使用されている私有地については道路交通法上公道と同じ扱いをされます)。
とはいえ、無断駐車が何ら法律に触れないというわけでもありません。
私有地への無断駐車は、民法709条に定められている「不法行為」に該当する可能性があります。
不法行為とは、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者が、その行為によって生じた損害を賠償する責任を負うという規定です。
私有地に無断で駐車する行為は、他人の土地を勝手に占拠しているとみなされます。
他人が契約している駐車枠や、マンションの住人が共有している場所なども同様に考えられます。権利を侵害された土地の所有者や駐車枠の契約者には、無断駐車によって生じた損害について賠償を求める権利があると言えるでしょう。
2、私有地への無断駐車に警察は対処してくれるのか?
私有地への無断駐車で困ってしまうと、まずは「違法駐車だ」と警察に通報することを考える方が多いのではないでしょうか。しかし、無断駐車を受けた場所が私有地であれば、道路交通法や車庫法が適用されないので、犯罪にはなりません。
こういったケースでも、警察は何らかの対処をしてくれるのでしょうか?
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(1)原則は当事者が対応することになる
私有地への無断駐車は、原則として当事者が自ら対応して解決を目指すことになります。
警察は犯罪を取り締まる機関であり、個人の権利を侵害する行為までをも取り締まることはできません。
「警察ならレッカー移動などが可能なのでは?」と考える方も多いでしょう。
しかし、これも道路交通法第51条による「道路における危険の防止・そのほか交通の安全と円滑を図るため必要な限度内」の措置であり、道路ではない私有地では認められません。 -
(2)無断駐車をしている人に連絡をしてくれる可能性はある
このように、私有地への無断駐車は原則として当事者が自ら解決するしかありません。
とはいえ、警察は犯罪を捜査して取り締まる機関であると同時に、市民の困りごとやトラブルの相談を受けてアドバイスをするための存在でもあります。
状況によっては、通報したことで警察がナンバープレートの番号から所有者・使用者を照会し、無断駐車の当事者に連絡をとってもらえる可能性があります。
すべてのケースにおいて、必ず連絡がとれるというわけではありませんが、無断駐車の状態を解消する方法としては期待できるでしょう。
3、無断駐車への正しい対策と注意点
私有地への無断駐車に対する正しい対策と注意点を挙げていきます。
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(1)自力救済は厳禁!
自力救済とは、自らの力で被害を回復し権利を実現させることですが、わが国の法制度では「自力救済」は禁止されています。
法律に明文化されているわけではありませんが、当然の前提として認められている原則です。
つまり、無断駐車をされたからといって、勝手にレッカー業者を依頼して移動させたり、反対に移動できないようにする目的でタイヤホイールを固定する器具を取り付けたりすることはできません。傷や故障の原因となってしまえば、逆に損害賠償を請求されるおそれがあります。
また「無断駐車厳禁!」と書いた貼り紙を窓ガラスや車体に貼り付ける行為は、器物損壊罪にあたる可能性もあるでしょう。
自力救済をすれば、迷惑を被っている無断駐車に対して警告を与えるつもりだったのに、反対に自分が責任を問われる立場になってしまう事態も十分にあり得るので注意しましょう。 -
(2)「罰金◯万円」は通用しない
マンションの駐車場や敷地、店舗の駐車場などでは「無断駐車をした場合は罰金◯万円をいただきます」といった看板や貼り紙を見かけることがあります。無断駐車によって迷惑を被っている土地や店舗の所有者であれば、ペナルティーを課しても当然だと考えるかもしれません。
しかし、土地や店舗などの所有者が一方的に決めた金額を請求しても、相手にはその金額を支払う義務はありません。
法外な罰金や迷惑料を請求してしまうと、相手から恐喝被害等を訴えられてしまうおそれがあると心得ておきましょう。 -
(3)車両の撮影など証拠を確保する
私有地への無断駐車を発見したら、まずは無断駐車の車両を撮影して証拠を確保しておきましょう。
撮影の際はナンバープレートが鮮明に写った状態で、前後からそれぞれ撮影しておくことをおすすめします。店舗などであれば防犯カメラの映像記録を保存しておくのもよいでしょう。
ナンバープレートが鮮明に撮影できていれば、所有者・使用者の特定が可能です。
無断駐車の場合にはその状況が分かる資料を、普通自動車なら陸運支局、軽自動車であれば軽自動車検査協会に提出することによって、車の所有者の氏名・住所等の開示を求めることができます。
また、弁護士のサポートを受けて車の所有者の情報の開示を求めることも可能です。 -
(4)管理会社などに通報する
悪質な無断駐車が続く場合は、駐車場の管理会社などに対して通報することをおすすめします。月極め駐車場や賃貸マンションであれば不動産会社、分譲マンションであれば管理会社や管理組合が窓口になるでしょう。
管理会社などに通報することで、無断駐車を禁止する看板や貼り紙の掲示、無断駐車をさせないためのポールやコーン標識の設置など、被害を防止するための措置が期待できます。
4、悪質な無断駐車を受けている! 損害賠償は請求できる?
悪質な無断駐車の被害を受けて、せっかく帰宅したのに駐車ができず、有料のパーキングに駐車する羽目になったというように実害が発生したケースでは、損害賠償を請求できる可能性があります。
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(1)実損分の賠償請求は可能
無断駐車が原因で実際に発生した損害については、当事者に対して賠償を請求できます。
損害賠償の額は、無断駐車の時間に応じた正規の駐車料金に相当する金額が適切です。
看板や貼り紙などで「無断駐車は罰金◯万円」と警告していても、不当に高額な請求が認められることはないので注意しましょう。
また、やむを得ず有料のパーキングなどを利用した、遠方に駐車することになりタクシーを利用したなどの場合は証拠を残しておくことで、それらの損害分も含めた請求が可能です。 -
(2)対応が難しい場合は弁護士に相談する
無断駐車の当事者を特定したい、無断駐車によって被った損害を賠償してもらいたいと考えるなら、弁護士への相談をおすすめします。
弁護士に依頼すれば、ナンバープレートの番号から車両の所有者・使用者の特定が可能です。
個人を特定できれば、弁護士が代理人となって相手に警告を与えたうえで損害賠償に向けた交渉を進めていくこともできます。
自力救済では解決できないのはもちろん、個人による交渉では感情的になってしまい脅迫や暴行といったトラブルに発展してしまうおそれがあるので、対応が難しいと感じたら迷わず弁護士に相談しましょう。
5、まとめ
無断駐車はとても迷惑な行為ですが、私有地への無断駐車は警察に通報しても根本的な解決は期待できません。
貼り紙やレッカー移動といった自力救済は絶対に避けるとともに、不動産会社や管理会社に通報して今後の被害が発生しないように対策を立ててもらいましょう。
無断駐車の当事者を特定して警告を与えたい、実損が生じたので損害賠償を請求したいとお考えであれば、ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスにご相談下さい。費用対効果の面を含めて、丁寧にご説明致します。
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