墓じまいでトラブルに! 親族やお寺との問題を解決する手段はある?
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沖縄には独自の風習があり、お墓参り行事などにも特色があるとされています。
中でも旧暦の七月七日、七夕が近づく時期は、お墓の改葬などに良い日取りとされており、同時期に「墓じまい」を検討される方も少なくないかもしれません。
ところが、墓じまいをめぐっては、お寺から高額の離檀料をいきなり請求されるなどのトラブルが生じることがあります。
本コラムでは、よくある墓じまいのトラブルや対処法について、ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスの弁護士が解説します。
1、「墓じまい」の基礎知識
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(1)墓じまいとは?
「墓じまい」とは、先祖の遺骨を改葬(納骨されている遺骨を、別の墓地等に移す)するために、先祖代々引き継がれているお墓を撤去して寺などに返却することを言います。
近年では、「お墓を継承する人がいない」、「遠方に暮らしていてお墓を守っていけない」などといった事情から、お墓参りしやすい場所に改葬したり、永代供養の墓地に改葬したりするケースも増えてきているようです。
ただ「墓じまい」をして改葬すると決めても、ご自身だけで勝手に進めることはできません。現在のお墓の管理者や改葬先のお墓の管理者、行政等に対する必要な手続きを経る必要が生じます。 -
(2)墓じまいの流れ
墓じまいをするためには、まず改葬の手続きを行います。改葬するためには、現在のお墓または納骨堂を所管する市町村が発行する「改葬許可証」が必要ですが、各自治体によって手続きや必要書類が異なるため注意が必要です。
現在のお墓、または納骨堂が那覇市内にある場合は、ハイサイ市民課、または各支所の窓口で申請することができます。
那覇市での申請に必要な書類等は、次の通りです。
- 申請者の本人確認書類
- 申請者の印鑑
- 現在のお墓や納骨堂に埋蔵または収蔵されている事実を証明する書面(収蔵証明書など)
- 受入証明書
- 申請書
申請書は上記窓口で受け取ることができ、申請書には次の事項を記載する必要があります。 - 死亡者の最終本籍、最終住所、氏名、性別
- 死亡年月日
- 埋葬または火葬の場所
- 埋葬または火葬の年月日
- 改葬の理由
- 改葬の場所
- 申請者の住所、氏名、死亡者との続柄
- 墓地使用者等の関係
なお、申請内容や必要事項、書類等は変更する可能性があります。申請をする場合は、必ず市役所へご確認の上でご対応ください。
申請が終わって無事に許可が下りると、「改葬許可証」が発行されます。
発行された改葬許可証を、お墓または納骨堂の管理者に提出することで、お墓からお骨を取り出すことができますが、墓石の撤去や遺骨の取り出し作業などは、石材店へ依頼するのが一般的です。見積もりなどをとって、相場を押さえておくと良いでしょう。
ただし、墓地や霊園によっては指定石材店と提携しており、他の石材店は利用できない場合があります。そのため、事前に墓地などの管理者に、指定石材店の有無の確認をとっておくことも大切です。
これらの準備が整ったのち、閉眼供養などを行った上で遺骨を取り出し、お墓を解体・撤去してさら地にする作業を行います。
2、墓じまいでよくある3つのトラブル
墓じまいにおいて発生することが多いトラブルとしては、次の3つが挙げられます。
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(1)親族とのトラブル
お墓に対する考え方は、親族であってもそれぞれ違うものです。そのため、関係する親族に相談しないで墓じまいを決めてしまえば、親族間で深刻なトラブルに発展する可能性があります。
したがって、墓じまいを検討するときには、関係する親族に相談し同意を得てから進めるようにすることが大切です。
ご自身が遠方に住んでいてお墓参りなどができないといった事情があるときにも、相談することでお墓を引き継いでくれる人が見つかるなど、解決策が生まれることもあります。
なお、親族の同意を得た上で墓じまいをすることになったとしても、費用負担をめぐってトラブルになるケースがあります。墓じまいにかかる費用の負担については、事前に決めておくと良いでしょう。 -
(2)お寺とのトラブル
お墓を管理しているのが菩提(ぼだい)寺であるような場合には、墓じまいをすれば基本的にお寺の檀家(だんか)ではなくなります。
檀家でなくなることを離檀(りだん)と言いますが、先祖代々檀家であったような場合には、お墓を代々守ってくれたお寺とのつながりは深いものでしょう。そのつながりを一方的に突然切ってしまうことは、トラブルを生じさせかねません。
墓じまいを決めたときには、事前に菩提寺に相談する、事情を説明するといった丁寧な対応が必要でしょう。
※菩提寺:自身の先祖代々のお墓があるお寺のこと -
(3)石材店とのトラブル
墓じまいをする際に、実際の作業を請け負うのは石材店です。
石材店は墓地や霊園で指定されおり、ご自身で石材店を選定することができないことも少なくありません。
指定石材店に作業を依頼したところ、思いのほか高額な撤去費用を請求されてトラブルになることがあります。
トラブルを回避するためには、指定石材店であっても事前に見積書などをもらって、他の石材店の価格などと比較し、納得した上で工事を依頼することが大切です。
3、「離檀料」は法的に支払う必要がある?
離檀する際には、離檀料をお寺に支払うという習わしがあります。しかし、お寺から高額な離檀料を請求された場合、支払う必要があるのでしょうか。
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(1)離檀料の法的支払い義務
離檀料は、いままでお世話になったお礼として、檀家側がお寺に支払うお布施のことを指します。
しかし、離檀料は、法律で檀家に支払い義務があることを規定しているわけではありません。したがって、墓地の契約書や規則に離檀料の定めがなければ、法的な意味においての支払い義務は生じないと言えるでしょう。
そのため、不当に高額な離檀料を請求されたとしても、多くのケースで支払い義務はない可能性が高いと考えられます。
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(2)高額な離檀料を請求されたときには
高額な離檀料を請求されたときには、まずはお寺側と話し合いの場を設けます。
しかし、中には、離檀料を支払わなければ改葬許可に必要な「収蔵証明書」を発行してくれない、話し合いには一切応じないといったケースもあるようです。また、離檀料を交渉できたとしても、石材店を指定され、撤去費用などに金額が上乗せされるリスクもあります。
このようなケースでは、当事者同士で話し合いの場を持ったとしても、解決できる見込みは低いでしょう。弁護士を立てて、代理人として交渉してもらうほか、調停や裁判などの法的な手続きで解決を図ることを検討すると良いでしょう。
4、墓じまいトラブルは弁護士に相談を
弁護士に相談するのは、ハードルが高いと感じるかもしれません。しかし、弁護士は身近で発生した法的なトラブルを解決するプロです。墓じまいに関するトラブル対応を弁護士に依頼することで、次のようなメリットがあります。
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(1)トラブル相手との交渉を任せられる
弁護士は、相談者の代理人としてトラブルの相手方と交渉することができます。
そのため、金銭トラブルが生じた親族や高額な離檀料の請求をする住職などと、直接やりとりをする必要がなくなります。
弁護士に一任することで、一切顔を合わせる必要がなくなるので、精神的な負担を軽減することができるでしょう。 -
(2)法的手続きに移行しても安心
弁護士は、判例や知見を元に、法的手続きに移行したときに、どのような結果が得られるか見込みを立てることができます。また、どのような主張や証拠を用意しておけば、有利に進めることができるのかも熟知しているので、法的手続きに移行した場合も安心です。
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(3)早期の解決が期待できる
弁護士が関与することで、トラブルの相手方が交渉に応じるケースも少なくありません。また、根拠のない請求を取り下げるなど、穏便な解決に導ける可能性が高まるでしょう。
結果として、トラブルを収束させることができ、個人間で交渉を続けるよりも早期に解決することが期待できます。
5、まとめ
本コラムでは、「墓じまい」をするときに発生しやすいトラブルや対処法について解説しました。
少子化の進行が予想される日本では、墓じまいの必要性は高まると考えられます。
しかし、お墓についての考え方は人それぞれであり、お寺と檀家の関係についても同様と言えます。そのため、墓じまいは、意見の対立や考え方の相違から、トラブルが生じやすい場面とも言えるでしょう。
深刻なトラブルに発展してしまう前に、弁護士に相談するなどの対処をとることが得策です。
ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスでは、墓じまいのトラブルに関するご相談もお受けできます。しっかりと状況を伺った上で、解決策を探っていきます。
おひとりで悩むことなく、まずはご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています