別居中の配偶者から子どもとの面会交流を拒否された! 交渉方法はある?
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「子どもを連れて別居した妻が、子どもと会わせてくれない」
「結婚生活に耐えられず家をでたら、夫に子どもに会う権利はもうないと拒絶された」
このように、別居中の一方の親が子どもと面会交流できないケースは少なくありません。
沖縄県は全国のなかでも離婚率が高く、21年間連続で全国最多です。そのため離婚や別居時における子どもとの面会交流は、ご自身や周囲の方にとって身近な問題といえるでしょう。
本コラムでは、別居中の配偶者から子どもとの面会交流を拒否された場合の交渉方法や対処法について、ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスの弁護士が解説します。
1、面会交流は別居中でも認められる
面会交流とは、離れて暮らす親と子どもが交流することをいいます。
離婚時に親権者にはなれなかった親は、離婚後は離れて暮らす子どもと交流する機会が失われます。そのため、離婚で離れて暮らすことになった親子には、基本的に面会交流が認められています。
しかし離れて暮らす子どもとの交流が必要になるのは、離婚後に限られません。
離婚前であっても、配偶者が子どもを連れて別居したような場合には、一方の親と子どもとの交流機会が失われます。長期間の別居は離婚理由として認められやすいことから、相手が離婚を考えている場合には別居が長期にわたることもあり得ます。そのため別居中にも、離婚後と同様に面会交流することが認められます。
2、面会交流が認められにくいケースとは?
面会交流は、基本的に子どもの利益をもっとも優先して考慮しなければいけないと定められています。そのため、子どもにとって不利益になる可能性がある次のようなケースでは、面会交流が認められないおそれがあります。
ただし最近の審判では面会交流の条件や方法などを工夫し、可能な限り面会交流ができるよう配慮される傾向にはあります。
それぞれケースの具体的な判断については、弁護士などにご相談ください。
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(1)配偶者や子どもへの暴力等があった
同居していたときに、配偶者に暴力をふるったり子どもを虐待したりしていたようなケースでは面会交流が認められない可能性があります。
このようなケースでは面会交流が子どもの利益にならないばかりか、再び暴力などを受けるリスクにもなりうるためです。 -
(2)子ども自身が面会交流を強く拒否する
一緒に暮らしている親が子どもに対して、離れて暮らす親のネガティブな情報を伝えることがあります。
そのような場合、幼い子どもであれば一緒に暮らす親の影響を受けやすいため、離れて暮らす親に会いたくないと拒否しても本心とは限りません。
しかし一定年齢に達した子どもが、面会交流相手の親に激しい嫌悪感を抱いており面会を拒否しているといったケースでは、面会交流が認められない可能性があります。 -
(3)監護親に与える影響が大きい
監護親とは、一緒に暮らす親のことをいいます。
離婚に伴い父母が激しく対立しており、面会交流することが監護親にとって大きな負担になるようなケースでは認められない可能性があります。
監護親に大きな負担を与えることになる面会交流は、ひいては子どもの利益につながらないと考えられるためです。
お問い合わせください。
3、面会交流を実現させるにはどうすればよい?
別居中の配偶者が子どもとの面会交流を拒否している場合には、まずは次のような方法で取り決めを行います。
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(1)別居中の父母が話し合いで取り決める
まずは別居中の夫婦が話し合い、面会交流について取り決めをする方法があります。
具体的には次のような事柄を話し合い、当事者間で決めていきます。- 面会交流の実施の有無
- 面会交流の頻度や時間、場所
- プレゼントやお小遣い
- 祖父母の面会交流への参加
- 学校行事への参加 など
「面会の頻度」は、1か月に一回、2か月に一回などと面会交流を実施するペースのことです。「一回あたりの面会の時間」は、1回あたり5時間であるとか宿泊付きで24時間などと具体的に決めていきます。
しかし、別居中の配偶者が面会交流を拒否しているケースにおいては、交渉が難航することが予想されます。話し合いで取り決めをしたいときには、相手の望みに対して譲歩したり気持ちをしっかりと伝えたりすることが大切です。 -
(2)面会交流調停・審判で取り決める
面会交流の話し合いがまとまらなかったり、話し合いを拒絶されていたりするケースでは、裁判所の手続きを利用して取り決めるとよいでしょう。
具体的には、配偶者の住所地の家庭裁判所に「子の監護に関する処分(面会交流)調停事件」として申し立てを行います。
調停では、調停委員を交えて当事者の夫婦が話し合いを重ねていきますが、原則として相手と顔をあわあせる必要はありません。
調停では、子どもの年齢、性別、性格、就学の有無、生活リズム、生活環境などを考えて、子どもの負担や意向に配慮したうえで取り決めができるように検討されます。また、取り決めに際し、父母に対して面会交流の際に注意すべき事項についてアドバイスが行われることもあります。
面会交流調停において、父母双方が合意できれば調停は成立して終了します。
合意できない場合には調停は不成立になり、自動的に審判手続きに移行します。
審判では、調停までに出そろった資料などをもとに「面会交流を実施するかどうか」、「どのように実施するのか」について裁判官が決定します。
そのため調停手続きにおける調査や話し合いの結果が、重要なポイントになるといえるでしょう。 -
(3)弁護士に相談する
別居中の配偶者から子どもとの面会交流を拒否されたときには、弁護士に相談して面会交流の取り決めを行うこともできます。
弁護士に相談した場合、弁護士は代理人として別居中の配偶者と面会交流について話し合うことができます。夫婦が直接話し合うと感情的になってしまうケースも少なくありませんが、弁護士が代理人として介入することで、双方ともに落ち着いて話し合いを進められる可能性が高まります。
また、弁護士は面会交流調停や審判において、ご相談者の方の希望に少しでも沿えるように、ポイントを押さえたサポートを行います。たとえば、調停でも難航しそうだと判断した場合は、最終的に審判になることも見据えて、適切な主張や立証を行っていきます。
その他、どのような問題点をクリアすべきなのかといったアドバイスを行い、面会交流を実現させるための助言やサポートを行います。
4、取り決めた面会交流が守られないときの対処法
面会交流について調停や審判で取り決めたときでも、約束を守らず子どもに会わせてもらえないこともあります。そういった場合には、次のような対処法が考えられます。
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(1)裁判所から履行勧告してもらう
家庭裁判所で取り決めた面会交流調停や審判の内容を守らない場合には、「履行勧告」の申し出をすることができます。
履行勧告とは、裁判所が相手の配偶者に取り決めを守るよう説得したり勧告したりする制度です。履行勧告は面会交流を強制できるものではありませんが、裁判所が関与するため相手方へプレッシャーを与えることができるでしょう。
なお、履行勧告に費用はかかりません。 -
(2)強制執行(間接強制)する
調停や審判で面会交流について具体的な取り決めをした場合には、裁判所に「間接強制」の申し立てをできる可能性があります。
「間接強制」とは、相手に一定の金銭の支払い義務を課す間接的な方法で約束を守らせようとするものです。
たとえば面会交流させない場合には、「交流させなかった回数に5万円をかけた金額を支払わなければならない」などという支払い義務を課します。
監護親は面会させなかったら支払わなければならないというプレッシャーを受けるため、面会交流が実現しやすくなります。
5、まとめ
面会交流は、離婚後だけでなく別居中にも認められます。
別居した配偶者が子どもに会わせてくれず話し合いもできないような場合には、家庭裁判所の調停や審判手続きを利用して、面会交流の取り決めを行うとよいでしょう。
調停や審判で取り決めた面会交流が守られなければ、間接執行などの制度を利用や弁護士への相談も検討できます。
ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスでは、面会交流についてお悩みの方のお力になれるよう全力でサポートします。あわせて離婚問題のご相談にも、それぞれの状況に応じたアドバイスやサポートを行います。おひとりで抱え込まず、お気軽にご相談ください。
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