ガールズバーの店長が知っておくべき風営法違反と接待行為の注意点
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大阪市内には、住民の4人に1人が沖縄からの移住者という、「リトル沖縄」と呼ばれるエリアがあります。その大阪市で、平成30年11月、許可なく店員に風営法上の「接待行為」をさせていたとしてガールズバー5店舗が一斉に摘発され、責任者ら5人が逮捕される事件がありました。
過去にも風営法違反でガールズバーが摘発され、経営者が無許可営業を理由に逮捕される事件が発生していますが、違法営業にならないためにはどのようなことに注意すればよいのでしょうか。
本コラムでは、ガールズバーを運営する際に知っておくべき風営法違反と接待行為などについて、ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスの弁護士が解説します。
1、ガールズバー開業時に必要な届出・許可とは
飲食店を開業する際には、業態に合わせてさまざまな届出・許可の手続きをしなければなりません。ガールズバーを開業する際は、お店の接客方針によっては、飲食店営業許可のほかに深夜酒類提供飲食店営業開始届または風俗営業許可も必要となることがあります。
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(1)ガールズバーとは
ガールズバーとは、バーテンダーが女性中心のバーのことを指します。ガールズバーでは、キャストと呼ばれる店員が酒類や料理を提供しますが、その際はカウンター越しに接客を行うのが原則です。しかし、接客といってもどこまでが法律上許される範囲なのか、ガールズバーの経営者やキャストにもあまり知られていないのが実情です。
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(2)飲食店営業許可が必要
ガールズバーを開業するときは、まず保健所で「飲食店営業許可」を取得します。飲食店営業許可を申請する際には、経営者が欠格事由に該当しないこと、お店に食品衛生責任者を置くことが必要です。また、お店の設備にも、厨房の床が掃除しやすい・厨房と客室が扉などで区分されているといった法律上の要件がありますので、要件をすべて満たすようにしなければなりません。
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(3)深夜酒類提供飲食店営業開始届もしくは風俗営業許可が必要
ガールズバーの経営には、飲食店営業許可に加え、営業所ごとに深夜酒類提供飲食店営業開始届もしくは風俗営業許可が必要となることが一般的です。これらは警察(公安委員会)で手続きを行わなければなりません。ただし、これらは同時に許可を受けることができないため、業態に合わせてどちらかを選びます。
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(4)深夜酒類提供飲食店営業とは
深夜酒類提供飲食店営業とは、バーや居酒屋のように、夜0時以降日の出の時間まで酒類を提供できる飲食店を営業することです。たとえば、牛丼屋やラーメン屋、ファミレスなどのように、お酒の提供がメインではないお店はここにあたらないように見えます。しかし一概に届出が不要というわけではないため、開業時には風営法の手続きの経験が豊富な弁護士や行政書士などに相談するほうがよいでしょう。
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(5)風俗営業とは
風俗営業とは、キャバクラやショーパブのように、設備を設けて客に飲食や遊興をさせて接待を行う営業のことです。遊興とは、不特定多数に対してダンスや歌を披露したり、イベントを企画したりすることを指します。風俗営業をする場合は、夜0時までに営業を終えなければなりません。したがって、「客が帰ろうとしなかったから」といって、0時を過ぎてもお店を閉めないのは違法営業となるので注意しましょう。
2、「深夜酒類提供飲食店」と「風俗営業店」の違いを見分けるポイント
「深夜酒類提供飲食店」と「風俗営業店」は、どちらも客に飲食をさせる点では共通していますが、両者には違いがあります。その違いについて見ていきましょう。
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(1)「接待行為」があるかどうか
経営するガールズバーが「深夜酒類提供飲食店」にあたるのか、「風俗営業」にあたるのかを判断する際、まず接待行為があるかどうかが問われます。カウンター越しに接客するだけであれば、お店を深夜酒類提供飲食店として問題のないことが多いでしょう。一方、店員が客の隣に座って長時間接客したり、一緒にお酒を飲んだりすることは「接待」にあたるため、このような接客方法をとる場合は風俗営業店にあたるので、風俗営業許可(1号営業許可)が必要になります。
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(2)「深夜営業」を行うかどうか
深夜営業を行うかどうかも、深夜酒類提供飲食店・風俗営業のどちらにあたるかの判断材料となります。夜0時を過ぎても営業を行う場合は、深夜酒類提供飲食店となります。一方、風俗営業店の場合は、先述の通り夜0時までに営業を終えることが必要です。
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(3)出店場所の規制があるかどうか
また、出店場所の規制の有無の違いもあります。深夜酒類提供飲食店・風俗営業店のどちらも(近隣)商業地域や(準)工業地域に出店場所が限られる点は共通しています。しかし、風俗営業店には「保全対象施設」と呼ばれる施設から一定の距離の範囲内には出店してはいけないというルールがあります。その「保全対象施設」とは以下の通りです。
学校 幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、特別支援学校など 図書館 地方公共団体や日本赤十字社、一般社団法人、一般財団法人が運営する図書館 児童福祉施設 保育所、助産施設、児童養護施設、児童発達支援センターなど 病院 歯科医院を含む医療施設で、病床が20以上の施設 診療所 歯科医院を含む医療施設で、病床が19以下の施設
3、風営法上の「接待行為」とは
風営法上の接待行為とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」です。「歓楽的雰囲気を醸し出す」とは、異性に対して気があると思わせるような態度で接することです。しかし、具体的にどのような行為が接待行為にあたるのかがわからず、不安に思っているガールズバーの経営者やキャストの方も多いと思いますので、ここでは接待行為とはどのような行為なのかについて解説します。
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(1)談笑・お酌
接待行為とは、客と談笑したり、お酌をしたりすることを指します。ただし、ここでいう談笑・お酌とは、カウンター越しかどうかを問わず、特定の客のそばについてずっと話し相手になったり、酒類などの飲食物を提供したりする行為のことです。お客のそばに行っても飲食物を提供した後にすぐにその場を立ち去ったり、提供の際に一言二言会話を交わしたりすることは、接待行為にはあたりません。
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(2)ダンス・ショー
特定少数の客に、飲食物の提供をしながらダンスやショー、生演奏を見せる行為も、接待行為となります。たとえば、ライブハウスや芸者さんが接待をする料亭などがこれに該当します。逆に、飲食を伴わない社交ダンスサークルや、ホテルや宴会場で行うダンスやショーなどは接待行為にあたらないとされています。
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(3)ゲーム・遊戯
店員が客と一緒にゲームなどを楽しむことも、接待行為にあたります。ここでいうゲーム・遊戯とは、テレビゲームやトランプ、ダーツ、ビリヤードなどさまざまなものが該当します。ただし、客が勝手にゲームなどを楽しむことは接待行為にはなりません。
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(4)カラオケでのデュエット・手拍子
客がカラオケで歌うときに、一緒に歌ったり手拍子をしたりすることは接待行為になります。また、歌い終わった後に必要以上にほめはやしたり拍手をしたりすることも、これに含みます。ただし、カラオケの機材を準備したり、カラオケボックスのように客だけがカラオケを楽しんだりすることは接待行為には該当しません。
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(5)スキンシップ
接客するときに、身体を密着させるようにして座ったり、必要以上に身体に触れたりしてスキンシップをすることは、接待行為にあたります。ただし、酔いつぶれた客を介抱したり、社交辞令として握手をしたりすることは、ここでいう接待行為にはならないことに注意が必要です。
4、ガールズバーの経営で法律違反をしないための注意点
ガールズバーの中には、風俗営業許可を取っていないのにキャストに接待行為をさせるなど、違法状態でお店を続けているところもあるかもしれません。しかし、違反が明るみに出れば、経営者だけではなくお店で働くキャストやホールスタッフなどにも影響が及びます。違法営業をしないためには、どこに注意すればよいのでしょうか。
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(1)ガールズバーでは違法営業が日常的に行われていることも
ガールズバーの中には、「許可の申請が面倒だから……」「うちはキャバクラじゃなくてガールズバーだから……」といって、深夜酒類提供飲食店の届出や風俗営業の許可なく、違法行為を平然と行っているところもあります。しかし、いつそれが見つかって摘発されるかわかりません。そうなる前に、きちんととるべき許可は取っておくことが必要です。
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(2)ガールズバーが違法営業をするとどうなるか
違法営業を続けていると、店内をこっそり撮影されてSNSにアップされ、そこから摘発される可能性はゼロではありません。摘発されれば、業務改善命令などの行政処分が下ったり、経営者が逮捕されたりすることもあります。また、行政処分が下りても改善が見られない場合は、営業停止や許可の取り消しといった重い処分となる可能性もあります。許可が取り消しになると、その後5年間は風俗営業許可の新規取得ができなくなるため、法令に則った営業を行うことがわが身を守ることにもつながるのです。
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(3)深夜酒類提供飲食店では「接待」をしない
風営法違反をしないために、深夜酒類提供飲食店の届出を行っているガールズバーでは、キャストに接待行為をさせないことが非常に重要です。たとえば、料理やお酒を運んだときに、客との会話が盛り上がって、長く話し込んでしまうこともあるかもしれません。しかし、継続的に談笑することが「接待」に当たるとして摘発された事例もあるので、客と会話をするときには注意が必要です。
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(4)風俗営業では「深夜営業」をしない
風俗営業許可を取得した場合は、夜0時以降の深夜営業をしないようにしましょう。そのためには、閉店時間を0時より前に設定する、閉店の30分前にラストオーダーになる旨を客にあらかじめ伝えておくなどをしておきます。客が帰らないからなどの理由は通用しないと思っておいたほうがよいでしょう。
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(5)未成年に飲酒をさせない
未成年が飲酒したり、未成年に飲酒をさせたりするのが法律で禁止されていることはもちろん、未成年の客に酒類を提供するだけでも罪になりますので、未成年には絶対に飲酒させないようにしましょう。
5、まとめ
自分が経営しているお店と同じようなガールズバーが摘発されたニュースを見ると、「自分のお店も違法状態になっていないだろうか」と心配になることでしょう。お客さまの隣に座る行為など、自分の行っている接客が接待行為に当たるのかどうか、日々不安を感じているキャストの方もいらっしゃると思います。
ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスでは、ガールズバーを新規開業したい方や、すでにガールズバーを経営されている方のご相談を受け付けております。
ベリーベストグループには風営法に関する知見豊富な行政書士も在籍しておりますので、各士業が密接に連携しながらアドバイスや手続きの代行をすることが可能です。
「ガールズバー開業に向けた手続きについて、弁護士のアドバイスが欲しい」「自分たちの接客の仕方が接待行為にあたらないか相談したい」などの場合は、当事務所までお気軽にご連絡ください。
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