【後編】勤務態度が悪い社員の対応をしたい! 必要な対策とは? 解雇はできる?
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前編では、勤務態度の悪い社員への対応方法についての注意点や、解雇をする前に使用者側がするべきことについて解説いたしました。
後編では、勤務態度の悪い社員を解雇できるのか、「もしも」に備えて企業がしておくべき対策方法について、那覇オフィスの弁護士が解説いたします。
3、勤務態度が悪い社員は解雇できる?
何をしても改善されない場合には、辞めてもらうことも検討しなければいけません。では勤務態度が悪いという理由で解雇することはできるのでしょうか?
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(1)まずは退職勧奨
度重なる注意・指導や懲戒処分でも問題社員に変化が見られない場合には、退職勧奨をしましょう。
退職勧奨とは、会社が社員に自主的な退職を勧めることです。
解雇とは違い、あくまで「退職を促す」ことに留まるため、社員が拒否すればそれ以上強要することはできません。ただし合意した場合には、解雇ではなく、合意のうえでの退職となります。
社員の行動・言動が会社の就業規則に違反すること、改善の兆しが見られないことなどをはっきりと本人に伝え、退職の話をしてみましょう。
退職勧奨は、自己都合ではなく会社都合の扱いになりますので、失業保険を受け取る際にも有利となるという事情も伝えておきましょう。交渉材料として、退職金の積み増しなどを提示するという手段もあります。
社員はそれまでの会社からの注意や処分によって、ある程度問題を認識しているはずですので、退職勧奨があれば応じる可能性があります。
ただししつこく退職を勧めたり嫌がらせをしたりすると、退職強要として損害賠償を請求される恐れがありますので、注意してください。 -
(2)解雇はハードルが高い
退職勧奨にも応じない場合には、解雇を検討することになります。ですが、これは最もハードルが高い手段といえます。
解雇する場合には、懲戒解雇か普通解雇を選択することになるでしょう。
普通解雇とは病気やけがにより働くことが難しくなった、勤務成績や態度が悪い、著しく能力が低いなど、社員が適切に労働を提供しない場合に行う解雇です。
一方で懲戒解雇とは、社内の秩序を乱すなど社員が問題を起こした際に仕事を辞めさせることです。いずれも就業規則の懲戒解雇規定に基づいて行わなければいけません。
ただし労働者が不当に解雇されることがないよう、労働契約法第16条では解雇について次のルールを定めています。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」
これを満たさない場合は違法となり、社員から訴えられれば解雇無効と判断されたり、賠償を命じられたりするでしょう。
合理性や相当性が認められる要件としては、たとえば社員が実際に働けない、会社は十分な指導をして改善の機会を与えた、他の社員に行った処分に比べて重すぎない、といったことが挙げられます。
ただし「解雇はやむを得ない」と認められることは簡単ではなく、裁判で会社側が敗訴するケースは少なくありません。解雇は最終手段と考えましょう。
4、「もしも」に備えてしておくべき対策
社員は「私は何も悪くない」「会社の処分は不当だ」として、懲戒処分や解雇が不当として裁判を起こす可能性があります。そういった「もしも」の場合に備えて、準備をしておくことも大事です。
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(1)就業規則や雇用契約書の整備
懲戒処分や解雇の根拠となるのが、就業規則です。
今一度、自社の就業規則を見直し、必要な懲戒規定が整っているか、内容に不備はないかなどを確認しましょう。
また雇用契約書にも解雇についてしっかりと明示しておくことが大事です。これまできちんと書かれていなかった場合には、今後に備えて見直しをしておきましょう。 -
(2)証拠を集めておく
裁判では証拠が非常に重要です。
解雇が相当であったと認めてもらうためには、社員の勤務態度が著しく悪かったこと、会社が解雇を避けるためにあらゆる手を尽くしたということを証明しなければいけません。
そのためにはまず、社員の問題行動の証拠が必要です。
遅刻を繰り返していた場合には勤務記録、言動に問題があった場合には会話の録音、取引先からの苦情があった場合にはそのメールなど、できるだけ多く集めておきましょう。
また会社が行った注意・指導の記録や文書、懲戒処分の記録なども大事です。口頭で行うだけでなく書面でも行い、証拠を残しておきましょう。 -
(3)弁護士に相談
勤務態度の悪い社員の対応で困っている場合、また社員から訴えられてしまった場合には、弁護士に相談しましょう。
会社が対応を誤れば、社員が勤務態度を見直すどころか逆上したり、裁判に発展したりする可能性があります。敗訴すれば会社の社会的な信頼も傷つきます。
そういった最悪の事態を防ぐために、早めに専門家に相談することが大事です。労働問題に詳しい弁護士であれば、これまでの事例をもとに「もしも」に備えて必要な対策を提示してくれます。就業規則の見直しなどの相談もできます。
大きなトラブルになってから後悔することのないよう、弁護士と一緒にしっかりと対策を考えましょう。
5、まとめ
勤務態度の悪い社員をそのままにしていることは、会社にとっても社員本人にとってもよくありません。特に社員数が少ない会社では、1人の行動がもたらす周囲への影響は、自然と大きくなるでしょう。
ベリーベスト法律事務所那覇オフィスでは、弁護士がこれまでの経験や法律知識に基づき、問題社員に関するご相談をお受けしています。日常的な相談先として、顧問弁護士サービスをご利用いただくこともできます。
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