離婚時に家(不動産)を共有名義のままにしないほうが良い?

2025年12月22日
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離婚時に家(不動産)を共有名義のままにしないほうが良い?

厚生労働省が公表している「令和6年人口動態統計」によると、令和6年の沖縄県内の離婚件数は3222件でした。沖縄県内の離婚に関して特徴的なのが、離婚率の高さです。全国の離婚率(1000人あたり)が1.55であるのに対して、沖縄県の離婚率(1000人あたり)は2.24と、高くなっているのです。

離婚時に夫婦の共有名義の不動産がある場合には、その処理をめぐって争いになるケースも少なくありません。「話し合いがまとまらないから」という理由で共有名義のまま放置していると、将来さまざまなトラブルに巻き込まれる可能性もある点に注意が必要です。また、マイホームの購入時に住宅ローンを利用している場合には、住宅ローンの処理についても話し合いをしなければなりません。

本コラムでは、離婚する場合における共有名義の不動産の処理について、ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスの弁護士が解説します。


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1、家を共同名義のまま離婚することを避けるべき理由

自宅を共有名義のまま離婚することに伴うリスクとしては、以下のようなものがあります。

  1. (1)売却時に相手の同意が必要

    離婚後の自宅の利用方法としては、「自分で自宅に住む」ということ以外にも、「第三者に賃貸する」や「売却する」などの選択肢があります。

    不動産を単独所有している場合には、自分の判断で賃貸や売却などの処分をすることができます。しかし、共有名義の不動産の場合には、他の共有者の同意がない限りはこれらの処分を行うことができません
    離婚後も不動産を共有名義の状態のままにしておくと、共有名義の不動産を賃貸する際や、売却する際など何かあるたびに元配偶者に連絡を取る必要があり、かなりのストレスとなるでしょう。
    また、相手と連絡がとれなかったり、共有名義の不動産の処分に同意をしてくれなかったりする場合には、不動産を有効活用することができないというリスクも生じるのです。

  2. (2)相続が発生すると関係が複雑になる

    離婚後に元配偶者が亡くなると、元配偶者の共有持分については、元配偶者の相続人が相続することになります。

    たとえば、元夫が亡くなったとしても、元妻には元夫の遺産を相続する権利はありません。離婚後に元夫が再婚をし、再婚相手との間に子どもが生まれたという場合には、元夫の遺産は再婚相手とその子どもが相続することになります。
    つまり、元夫の持分については元夫と再婚相手との間の子が相続することになり、元妻は、元夫の再婚相手との子と、不動産を共有することになるのです。

    このように、共有者に相続が発生すると共有関係が複雑になって、不動産を活用することが困難になってしまうおそれがあるのです。

  3. (3)固定資産税や維持費がかかる

    不動産を所有している場合には、固定資産税や修繕費、保険などの維持費を支払う必要があります。

    不動産が共有名義である場合には、代表者のもとに支払通知書が送られてきますが、固定資産税は共有者が共有名義に応じて負担するのが原則となります。
    そのため、離婚後も共有名義のままにしておくと、自宅を利用していないにもかかわらず、共有持分に応じて費用負担を求められるおそれがあるのです。

2、住宅ローンが残っている状態で離婚する場合の注意点

多くの方は、自宅を購入する際に住宅ローンを利用します。
住宅ローンがある状態で離婚をする場合には、以下の点に注意が必要となります。

  1. (1)オーバーローンの場合には売却しても借金が残る

    住宅ローンの残額が自宅の評価額を上回っている状態のことを「オーバーローン」といいます。

    自宅を共有名義のままにしておくことを避けるために自宅を売却しようとしても、オーバーローンの状態だと売却後も住宅ローンが残ってしまうため、住宅ローンの支払いを続けなければなりません。

  2. (2)名義変更の際に金融機関の同意が必要

    共有状態を解消するために、自宅の名義人をどちらか一方の単独名義にする方法をとることがあります。
    名義変更自体は、共有者の合意のみによって行うことができますが、住宅ローンがある場合には特別な配慮が必要になってきます。

    住宅ローンの借入時の契約では、「名義変更をする際には金融機関の同意を得る」という条件が含まれていることが一般的です。
    金融機関の同意を得ることなく勝手に名義変更をしてしまうと、住宅ローンの条件違反となってしまうため、金融機関から残っている住宅ローンの一括返済を求められるリスクがあります。

  3. (3)離婚をしても住宅ローンの連帯保証人から外してもらえるわけではない

    「離婚をすれば、連帯保証人を外してもらえる」と思っている方もいますが、住宅ローンの場合はもちろん、それ以外のローンについても連帯保証人を外してもらうのは、そう簡単なことではありません。

    銀行としては、主債務者に万が一のことがあった場合には連帯保証人から返済を受けることを期待してお金を貸しています。
    離婚とはあくまで夫婦間のプライベートな事情にすぎません。それにも関わらず離婚を理由に連帯保証人を外すことができてしまうと、銀行としては不測の損害を被ってしまうことになります。
    そのため、連帯保証人を外すためには、銀行の同意が必要になってくるのです。

    しかし、連帯保証人を外すことに同意してもらうためには、現在の連帯保証人と同程度かそれ以上の資力を有する者を新たに連帯保証人とするか、連帯保証人に代わって物的担保を提供する必要等があります。
    つまり、「代わりに連帯保証人になってくれる人を探す」「別の不動産を担保に提供する」「住宅ローンの借り換えをする」といった方法をとれない場合には、離婚したとしても連帯保証人を外してもらうことは困難でしょう。

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3、離婚時の財産分与と不動産の関係

離婚時に行われる財産分与における不動産の取り扱いについて解説します。

  1. (1)不動産も財産分与の対象になる

    「財産分与」とは、夫婦が協力して維持・形成した財産を清算する制度です。
    婚姻後に購入した不動産は、原則として、財産分与の対象となります。

    「共有名義の不動産は、共有持分に応じて分ける」と思われている方もいるかもしれません。しかし、財産分与の割合と共有持分の割合は、原則として無関係です。
    財産分与では、夫婦の財産維持・形成に対する貢献度に応じて財産を分けることになります。通常、夫婦の貢献度は等しいものと考えられているため、2分の1の割合で財産分与を行うのが原則です。
    そのため、不動産の持ち分が夫3分の2・妻3分の1と登記されている場合であっても、財産分与の場面では2分の1の割合で分けることになるのです。

  2. (2)オーバーローンの不動産は財産分与の対象外

    住宅ローンを利用している場合には、財産分与の対象となる不動産の評価額については、住宅ローンを控除して考える必要があります。

    オーバーローンの状態だと、不動産から住宅ローンを控除するとマイナスになるため、この場合には、不動産の価値はゼロであるとみなされます。
    夫婦の合意によってオーバーローンの不動産についても財産分与の対象に含めることは可能ですが、どちらか一方が反対している場合には、たとえ裁判をしたとしても財産分与の対象に含めることは事実上できません。

  3. (3)財産分与で住宅ローンの分担割合を定めても金融機関に主張することはできない

    住宅ローンは金融機関と債務者の合意によって取り決めがされるものであるところ、財産分与は夫婦間の合意のみによって決定するものであるため、夫婦間でなされた合意に関与していない金融機関にその内容を主張することはできません。

    たとえば、夫婦間の合意によって住宅ローンの負担者や負担割合を定めたとしても、金融機関は夫婦間の合意に縛られることなく、当初の契約に従って住宅ローンの支払いを請求することができるのです。

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4、離婚時に共有名義の家はどうするのがベストか

離婚時における、夫婦の共有名義の不動産の適切な処理方法を解説します。

  1. (1)単独名義にするのがベスト

    共有名義の状態のままにしておくと、不動産の利活用の場面で支障がでたり、将来相続が発生すると権利関係が複雑になったりするなどのデメリットがあります。そのため、共有名義の不動産は、夫婦のどちらか一方の単独名義にするのが最も適切な方法だといえます。

    財産分与をする際には、夫婦でよく話し合いをして、不動産の共有関係を解消するとよいでしょう。
    なお、「共有持分を移転すると、贈与税が発生する」と思っている方もいますが、財産分与による共有持分の移転には原則として贈与税が課税されることはありませんので、ご安心ください。
    また、離婚後に単独名義に変更するなどして共有持分を取得すると、名義変更の手続きする際に登録免許税がかかります。

  2. (2)不動産の取得を希望しない場合には売却を検討

    「夫婦のどちらも不動産の取得を希望しない」という場合には、共有名義の不動産を売却して売却代金を分ける方法がベストになります。
    夫婦の共有財産である現金や預貯金に不動産の売却代金を含めて財産分与をするだけであるため、財産分与の方法としては簡単で争いが少ない方法だといえます。

    離婚後に売却するという方法も考えられますが、離婚後も不動産の売却のためにお互いに連絡を取り合わなければならないということは、夫婦の双方にとってストレスになります。また、相手の協力が得られなくなるおそれもあるのです。
    共有名義の不動産を売却するのであれば、離婚後ではなく、お互いに話し合いができる環境が整っている離婚時のタイミングで行うことが最適でしょう。

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5、まとめ

共有名義の不動産を持つ夫婦が、そのままの状態で離婚をすると、離婚後にさまざまなトラブルやデメリットが生じるおそれがあります。
そのため、共有状態の不動産は、離婚時の財産分与の時点で、単独名義にしたり処分したりすることを検討してください。

離婚時には、財産分与だけでなく、親権、養育費、慰謝料、面会交流などの取り決めが必要となるため、スムーズに離婚の話し合いを進行するためにもベリーベスト法律事務所 那覇オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています