経営者との離婚で知っておきたい3つのポイントを那覇の弁護士が解説
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沖縄県は、離婚率が全国で一番高い県であることを、ご存じの方も少なくないと思います。
実際に厚生労働省が公表する平成30年人口動態統計でも、沖縄県の人口1000人あたりの離婚率は、全国平均の1.68を大きく上回る2.53であったことが公表されています。
沖縄では離婚は身近に起こりうる出来事といえますが、配偶者が会社の経営者であるなど、離婚の際に考慮すべき特別な事情があるケースもまれではないと考えられます。
本コラムでは、会社の経営者と離婚する際に知っておきたい4つのポイントについてベリーベスト法律事務所 那覇オフィスの弁護士がご説明していきます。
1、経営者と離婚する方法
夫婦の一方が会社の経営者であっても、離婚の方法は通常の離婚と変わりありません。
離婚するためには、以下のいずれかの方法で離婚を成立させる必要があります。
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(1)協議離婚
協議離婚は、当事者である夫婦間の話し合いで離婚に合意し、離婚届を役所に提出して行う方法です。夫婦双方の合意があれば、どのような離婚理由であっても離婚することができます。
また、慰謝料額や養育費なども、合意できればその金額を支払えばよいことになります。
協議離婚の場合は、養育費などの取り決めた条件を強制執行認諾文言付き公正証書にしておくと相手に不払いがあったときに強制執行ができるので安心です。 -
(2)調停離婚
調停離婚は、家庭裁判所で調停委員を交えて話し合いを行い、合意できた場合に成立する離婚です。
「離婚の条件が折り合わない」「相手が離婚の話し合いに応じない」といった場合には、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行います。
調停で離婚に合意できれば、強制執行力のある調停調書が作成されます。
なお、離婚に関しては、すぐに裁判を提起することはできません。必ず調停を経る必要があります。 -
(3)裁判離婚
裁判離婚は、裁判官の言い渡す判決で認められる離婚です。
「離婚調停に相手が出席しない」「調停でも離婚に合意できない」といった場合には、調停は不成立になります。この場合は、離婚するために離婚裁判を提起して離婚を認める判決を得る必要があります。
裁判では、民法に定める法定離婚事由があると判断される場合にのみ、離婚が認められるため、離婚事由が存在することが重要になります。
2、経営者との離婚で知っておきたい3つのポイント
離婚方法は通常の離婚とは異ならないものの、経営者と離婚する際には知っておきたい4つのポイントがあります。
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(1)財産分与の対象財産を正確に把握する
財産分与とは、夫婦が結婚している間に協力して築き上げた財産を離婚の際にそれぞれの貢献の割合に応じて分配することです。
財産分与に含まれる財産には、結婚期間に蓄えた預貯金やマイホームなどの不動産、有価証券などのほか、マイナスの財産である住宅ローンなども対象になります。
なお、これらの財産が夫婦どちらかの名義になっていたとしても、共有財産として財産分与の対象となるのが原則です。
ちなみに、結婚前に築いた財産や相続財産といった特有財産は、財産分与の対象にはなりません。
経営者との離婚では、主に次にあげるポイントを押さえて、財産分与の対象財産を正確に把握することが大切です。
●会社名義の財産
夫婦の一方が経営者である場合には、会社名義の財産でも実質的には夫婦の財産であることも少なくありません。
法律上は、会社などの法人と個人は別のものであり、会社財産と経営者の個人財産は区別されます。そのため会社財産は、財産分与の対象にはならないのが原則です。
しかし、会社が小規模で夫婦のみで経営しているような場合には、例外的に会社名義の財産であっても、実質的に夫婦の財産と認められることがあります。そのような場合には、会社名義の財産も財産分与の対象に含まれる可能性があることを押さえておきましょう。
●退職金
会社経営者や自営業者の場合には、会社員などと異なり退職金がないことも少なくありません。しかし経営者が小規模企業共済に加入していれば、実質的に退職金と変わらない性質の共済金を受け取ることができます。
また、法人を契約者とし経営者である社長を被保険者とする「長期平準定期保険」などに加入していれば、実質的に退職金と変わらない性質の保険金を受け取ることができます。
このような共済金や保険金に関しては、離婚の時期がそれらの受け取り時期に近いなどの条件を満たす場合、財産分与の対象に含めることができる可能性があります。
●ゴルフ会員権
経営者の方は、仕事の関係上ゴルフ会員権を有していることが多い傾向にあります。
ゴルフ会員権も財産なので、財産分与の対象に含められる可能性があります。
●株式
経営者の方は、株式を保有していることも少なくありません。
保有している株式が公開会社のものであれば、評価額を客観的に算出することができます。しかし非公開会社の自己株式などについては、株式の評価額を客観的に算出することが難しく争いの種になる可能性があります。
株式を財産分与の対象に含めることはもちろんですが、その評価額については弁護士や税理士などに相談して、正確に把握することが大切といえるでしょう。 -
(2)財産分与の割合が通常と異なる可能性がある
財産分与の割合については、通常は夫婦それぞれ2分の1ずつとされることが多いものです。たとえ共働きではなく専業主婦(夫)であったとしても、一方を支えて夫婦の財産を築き上げたと考えられるため同様の割合になります。
ただし、会社経営者との離婚では、財産分与の割合が通常と異なるケースがあります。
会社経営者個人の力量によって多大な財産を築き上げたような場合には、財産を形成する上での貢献の割合が、経営者である配偶者の方が多いと考えられるためです。
財産を築いてきた背景に経営者の手腕が大きく影響しているような場合は、裁判になれば経営者側の財産分与の割合が多くなる可能性があります。 -
(3)年収が高額であれば養育費・婚姻費用の算定が難しい
離婚に際しては、婚姻費用や子どもの養育費を必要に応じて取り決めます。
しかし経営者の年収は高額であることも多く、標準的な算定表が当てはめにくいので算定が難しいという点があります。
たとえば養育費については、裁判所のホームページに掲載されている算定表を使用して相場を算出します。しかし算定表は、年収2000万円を超えるケースには対応していません。
そのため2000万円を超える年収がある経営者と離婚する場合には、相場を算定しにくいため、夫婦間だけで取り決めをしようとするとトラブルになる可能性があります。
3、経営者には高額な慰謝料を請求できる可能性がある
経営者との離婚は、高額な慰謝料を請求できるというイメージがあるかもしれません。
しかし経営者と離婚するからといって、極端に高額な慰謝料を請求できるというわけではありません。
まず理解しておきたいのは、離婚に伴う慰謝料は、離婚すれば必ず請求できるものではないということです。相手の不貞行為やDV(ドメスティックバイオレンス)などが、離婚原因になった場合においてのみ、慰謝料の請求が認められます。
また慰謝料の金額は、家庭裁判所では社会的地位や支払い能力だけでなく子どもの有無などの諸事情を総合的に考慮して判断されます。
年収が多ければ慰謝料の金額が増えることもありますが、極端に高額になるということも考えにくいといえるでしょう。
4、配偶者の会社で働いている場合に注意すべきこと
経営する会社で配偶者が従業員として働いていたような場合には、離婚に伴い仕事に問題が生じることもあります。
「同じ会社で働きたくない」と思う場合には、従業員として働く配偶者が退職手続きをとることで問題は解決します。しかし「離婚はしても今までの仕事は続けたい」と思う場合には、解雇されないか心配になることでしょう。
ただし、労働契約法では、解雇は「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と判断できる理由がある」場合に限り許されるとしています。つまり、退職を望まないにもかかわらず、離婚を理由に元配偶者を解雇することは原則として許されないのです。
正当な理由なく解雇されたような場合は泣き寝入りせず、弁護士に相談して解雇の撤回などを求めるべきでしょう。
5、まとめ
本コラムでは、会社の経営者と離婚する際に知っておきたい4つのポイントについて解説しました。
経営者との離婚では、財産分与の対象範囲や評価額、養育費の算定など当事者だけでは解決しにくい複雑な問題が生じることがあります。
経営者である配偶者との離婚問題にお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスの弁護士へご相談ください。離婚、男女問題に精通した弁護士が、しっかりとお話を伺ったうで、可能な限りご希望にそった形で離婚が成立できるよう、全力でサポートします。
ひとりで悩まず、まずはご相談ください。
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