DV(家庭内暴力)とモラハラが原因で離婚時に慰謝料をできるだけ多く獲得する方法
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平成29年現在、沖縄県は14年間連続で離婚率全国1位になっています。沖縄県内での離婚理由の多くは、お金の問題と、DV(家庭内暴力)を含めた、モラハラ等が目立って挙げられています。
離婚原因のランキングに上位している性格の不一致や不貞行為なども挙がりますが、離婚率が高い沖縄県では夫婦間のモラハラやDV(家庭内暴力)による離婚理由が、多く見受けられます。
モラハラやDVの被害により心身ともに深い傷を負うと、身の安全を優先して1日でも早く離婚したい!と思うでしょう。しかし、DVやモラハラを受けていた場合、慰謝料を請求することが可能です。慰謝料は離婚原因を作った責任のある配偶者から受け取ることができる、精神的損害に対する賠償金のことです。 あなたが精神的苦痛を受けた分、慰謝料を請求することが可能ですので、今すぐ、離婚したいと思っている人も、慰謝料請求のことも考えてから離婚の準備を進めるとよいでしょう。
では、慰謝料を請求するための手続きや離婚の準備にむけて、何をしたらいいのでしょうか。
今回はモラハラ・DV被害を受けた方のケースを中心に、慰謝料をもらうために心得ておくべき基礎知識や裁判までの流れを弁護士が解説します。
1、離婚理由別、もらえる慰謝料の相場
慰謝料請求には「●●をしたらいくらもらえる」という正確な決まりはありません。ですが、過去の判例を参考に請求できる慰謝料の相場があります。
今回はさまざまな離婚理由の中から、代表的な3つの事例と相場を紹介します。
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(1)不貞行為(ふていこうい)
相場:100万~300万円
離婚理由でよく取り上げられる不貞行為は100万円〜300万円で請求されるケースが多いとされています。
不貞行為による慰謝料の金額は明確に定められておらず「婚姻関係の破綻の有無や程度」「結婚期間の長さ」「相手方の資力と収入」などさまざまな事情を考慮して決定されます。
そのため夫婦間の事情や不倫の内容によっては100万円以下になることも、300万円以上になることもあります。 -
(2)悪意の遺棄(あくいのいき)
相場:50万円~200万円
悪意の遺棄とは「配偶者に生活費を渡さない」「理由なく別居をされた」「家出したきり帰ってこない」など民法第752条の「夫婦は同居し、互いに協力、扶助し合わなければならない」に反した離婚理由を指します。
こちらも不貞行為同様、夫婦間の事情によって慰謝料請求額に変動があります。 -
(3)モラハラ・DV
相場:100万円~300万円
殴る・蹴るといった暴力の度合いや経緯の他、どのくらいの期間DVを受け続けたのかなどを考慮して慰謝料が決定されます。「誰のお陰で 生活できていると思っているんだ!」などといった暴言や精神的な暴力で被害を受けたモラハラも同様です。
もしもあなたが以下の項目に心当たりがあるようでしたら、モラハラ・DVを理由として慰謝料請求をすることが可能なだけでなく、慰謝料の増額が見込まれます。- DV・モラハラを受けた回数が多い
- DV・モラハラを受けた期間が長い
- 被害者に落ち度がないにもかかわらず被害を受け続けている
- 被害が原因で後遺症・障がいが残った
- 被害が原因でうつ病などの精神病になった
- 養育が必要な子供の人数が多い
ただし平手で1度だけ叩かれた、年に1回だけしか暴力を振るわれないといった「暴力の程度」と「暴力の頻度」によってはモラハラ・DVによる離婚原因と認められない恐れがあります。平手で叩かれることが何度もある、1回の暴力であう怪我がひどいという場合はDVの項目に当てはまる可能性があります。
2、モラハラ・DVに関しての相談先
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(1)各種相談機関
・DV相談ナビ
「モラハラ・DV被害にあっているけれど、どこに相談をしたらいいのかわからない」「自分が配偶者から受けている被害はDVやモラハラに当てはまるのか判断できない」
そういった場合はまず内閣府男女共同参画局が運営を行っているDV相談ナビに電話をしてください。最寄りの各都道府県の相談機関の窓口に自動転送されて、直接相談できます。
⇒DV相談ナビについて
・配偶者暴力支援センター
配偶者から受ける暴力に身の危険を感じている場合は配偶者暴力支援センターへ連絡をしてください。モラハラも精神的DVの一種とされているので、身体的被害がなくても相談可能です。
支援センターはDV被害を受けている女性の逃げ場として運用されているため、各都道府県支援センターの住所が公表されていません。
下記内閣府リンク先の「配偶者暴力相談支援センター一覧」で都道府県別に施設センターと電話番号を掲載しています。ご自身の住んでいる都道府県のセンターを確認し、電話をしてください。
⇒配偶者暴力相談支援センター
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(2)弁護士事務所
一時的な避難だけではなく離婚を考えているのでしたら、弁護士に相談することをおすすめします。特に慰謝料請求を検討している場合、弁護士の力を借りることで希望額の慰謝料を獲得できる可能性があります。
弁護士事務所によっては無料相談を受け付けています。自分が受けた事例では慰謝料をいくらもらえるのかを前もって知りたい場合は一度利用してみましょう。
また、弁護士に依頼することで加害者である配偶者に対し交渉の代理も行なってもらえます。可能な限り配偶者と接触せずに離婚したい場合も、弁護士への相談が適任といっていいでしょう。
3、慰謝料をもらうまでの流れ
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(1)モラハラ・DVの証拠を集める
慰謝料をもらうためには客観的な証拠が必要です。配偶者にモラハラ・DVが離婚原因であると証明できる証拠があれば、どんなに相手が否定しても認めざるを得ない状況になります。
モラハラ・DVの証拠として挙げやすい項目は以下の4つです。
・医師の診断書
DVが原因で怪我をしても、傷が治ってしまったら暴力を受けていた証拠にはなりません。
「放っておけば自然に治る」「お金がもったいないから病院に行かない」などと言わず、必ず病院に行って診てもらいましょう。
その際、怪我をした理由をごまかさないようにしてください。DVを受けていることが恥ずかしくて言い出しにくいと思いますが、正直に「夫に暴力を振るわれた」と説明して診断書をもらうことが大切です。
モラハラが原因で心療内科にかかった際も同様です。「夫からの心ない言葉が原因」であると説明することで診断書を書いてもらうだけでなく、モラハラに対するアドバイスや対処法をもらえるでしょう。
・暴力で怪我をしたときの写真
経済的DVを受けている場合、病院に行ける時間やお金を確保できないケースがあります。
その場合は身体にできた傷を撮れば証拠として使うことが可能です。いつ頃受けた怪我なのか、日付も含めて記録しておくと尚いいでしょう。
・暴力行為や暴言を示す音源、映像、メール
特にモラハラが理由で離婚する際は音源、映像、メールの情報をいかに集めるかが重要になります。身体的な暴力が伴われるDVと異なり、被害を受けていたという証拠が残りにくいためです。
相手が怒鳴っているところをICレコーダーで録音する、散乱した部屋を撮影する、脅迫メールを保存してとっておくなどをして証拠を集めましょう。
・日々の暴力行為や暴言の記録をつづった日記や備忘録など
暴力や暴言の内容を具体的に書き残した日記も証拠として使われます。いつ頃から被害を受けているのか、被害を受けた頻度がどれくらいなのか、後から読み返してもわかるように書きましょう。
ただし日記をつける際は毎日つけることが重要です。暴力を受けた日・暴言を言われた日だけ書いても相手から「後付けで書いたものだ」と言われてしまうおそれがあります。 -
(2)配偶者への離婚の意思を伝える
配偶者へ離婚の意志を伝える流れは通常の離婚と変わりません。
しかしDV・モラハラ特有の問題として「離婚に失敗したらまたひどい目にあってしまう」といった精神的な恐怖から離婚を切り出せないケースが多く存在しています。
そこでDV・モラハラの証拠を集めたら離婚を切り出す前に被害を相談できる場所に助けを求めましょう。「モラハラ・DVに関しての相談先」で挙げた機関や実家・頼れる友人など、自分の身が安全な場所に逃げることを優先してください。 -
(3)協議離婚
離婚する意思を相手へ伝えると話し合いによって離婚を成立させる「協議離婚」が行われます。
ですがDV・モラハラが離婚原因の場合、本人に離婚の意思を伝えても逆上して危害を加える可能性があり、夫婦間で冷静な話し合いを望むことはできません。
友人などの第三者を間にはさんで話し合う方法もありますが、第三者が介入することでこじれてしまうおそれもあります。
そのためDV・モラハラが原因の場合、当事者間で進める協議離婚ではなく調停離婚から始めるケースや代理人である弁護士を間にはさんで話し合いをすすめるケースが多いです。 -
(4)調停離婚
協議離婚で話し合いがまとまらなかった場合、家庭裁判所の調停手続きを利用して話し合いを行います。
調停離婚は協議離婚と異なり相手と直接顔を合わせずに話し合いを進められます。ただし同じ裁判所に出頭するため、相手と鉢合わせしないと言い切れません。調停離婚を申し立てる際にDV被害を受けていたことを伝えれば会わないように配慮してもらえるので、必ず職員にDV被害を受けていたことを伝えましょう。
調停離婚で重要になるのはモラハラ・DV被害を受けていたという証拠を証明できるかどうかです。「離婚の証拠を集める」で挙げた証拠を提示することで離婚だけではなく慰謝料を請求できる可能性も出てきます。 -
(5)離婚裁判
調停離婚でも話がまとまらない、相手が離婚に合意しない場合は離婚裁判にすすみます。
法律が定める離婚原因がないと離婚裁判を起こせませんが、モラハラ・DVが離婚原因の場合は「その他、婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するため離婚裁判を起こすことが可能です。調停離婚で相手が「離婚をしたくない」と主張しても法律によって離婚できることが離婚裁判の利点でもあります。
離婚裁判も調停離婚と同じく、顔を合わせずに手続きを進められます。また弁護士に依頼をしていた場合、代理人として弁護士が裁判所に出頭するため相手と顔を合わせる可能性も減らせます。
尚、離婚裁判では協議離婚・調停離婚以上に証拠を重視されます。離婚をする権利、慰謝料をもらう権利があることを強く主張しましょう。
4、まとめ
いかがでしたでしょうか。
DV・モラハラは夫婦間だけで起きる問題のため第三者が気付きにくく、被害が長期化しやすいです。ご自身が受けている被害がDV・モラハラに該当する場合、早急な離婚を考えることをおすすめします。
一人で解決しようとすると話し合いがうまく進められず、さらなる暴力・暴言が繰り返されてしまう恐れがあります。加えて、一人で離婚問題を解決しようと考えると「一刻も早く離婚をしたい」という思いから慰謝料を請求することを後回しにしてしまい、いざ離婚した後にお金がなく生活が苦しくなるケースに陥ってしまいます。特にお子さんを連れて離婚をする場合、後々の生活を考えて慰謝料請求をする必要があります。
だからこそ、確実な離婚手続きを進めるために弁護士の力を頼ってください。離婚が成立した後によくあるトラブルとして「慰謝料や養育費を支払ってもらえなくなった」ということがあります。ですが、法的に有効な書面で慰謝料や養育費の支払い義務があることを残しておくことで差し押さえなどの強制的手段を行使することもできます。弁護士に離婚問題を依頼することで、離婚後のリスクに先手を打つことが可能になります。
離婚を考えている方だけではなく「DVなのかもしれない」「モラハラだったのかもしれない」と思った方もお気軽にご相談ください。現状を伝えることで、どのように離婚を進めたらいいのかアドバイスできることもあります。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています