略式起訴とは? 通常の起訴との違いや対象になる事件と刑罰について解説
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令和4年9月、那覇地検沖縄支部は高校野球部の監督である男性を傷害の罪で「略式起訴」しました。報道によると、この男性は北谷町内の野球場で当時部下だった男性の左足を蹴ってけがを負わせそうです。
刑事裁判を提起する手続きを「起訴」といいますが、略式起訴とはどのような手続きなのでしょうか。
この記事では略式起訴と通常の起訴との違いや適用される条件、手続きの流れなどについて、ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスの弁護士が解説します。
1、略式起訴とは|通常の起訴との違いや条件
まずは、略式起訴がどのような制度なのか、対象となる犯罪の種類や条件などを確認しましょう。
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(1)略式起訴とは
略式起訴とは、通常の起訴手続を簡略化して処理した場合の起訴のことです。
(そもそも起訴は、検察官が裁判所に対して刑事裁判を開くよう求めることをいいます。)
犯罪事件が法律に基づいて裁かれる場合には、刑事裁判の場で裁判官の審理を受けるのが原則です。しかし、膨大な件数の事件すべてを正式な裁判で審理していると、裁判所の処理能力を超えてしまうでしょう。そこで、一定の要件を満たす場合に限って、簡易的な方法で事件を処理するのが略式手続きです。
略式起訴は、検察官が裁判所に対して略式手続の開始を求める手続きを指します。
「裁判官に事件の審理を求める」という意味に注目すれば、通常の起訴がもつ役割と同じだといえるでしょう。 -
(2)略式起訴の対象となる犯罪
略式起訴の対象となるのは、簡易裁判所が管轄する比較的に軽微な事件に限られます。
簡易裁判所が裁判権をもつ犯罪は、罰金・拘留・科料にあたる罪や選択刑として罰金が定められている罪です。
原則として、簡易裁判所では禁錮以上の刑を科すことができません。ただし「◯年以下の懲役または◯万円以下の罰金」のように選択刑として罰金が定められている犯罪は、簡易裁判所と地方裁判所の両方に裁判権があるため、略式起訴の対象になります。 -
(3)通常の起訴との違い
通常の起訴は公判請求ともいいます。
略式起訴が通常の起訴と大きく異なるのは、次の2点です。- 書面審理のみで、迅速に処分が下される
- 確実に罰金・科料が科せられる
通常の起訴を経た事件では、検察官・弁護人が提出した証拠や公判廷における証言などをもとに裁判官が慎重に審理し、判決を下します。
一方で、略式起訴となった事件では、公開の裁判は開かれません。検察官が提出した書面のみで審理されるため、迅速に処分が下されます。
また、略式起訴された事件で下される刑罰は、100万円以下の罰金・科料のみです。
科料とは1万円以下の金銭徴収を受ける刑で、命令に従って罰金・科料を納付することで刑が終了します。迅速な処分とあわせて、素早い社会復帰が期待できるでしょう。
ただし、金銭納付だけで済まされるといっても、罰金・科料は前科にあたります。
前科をつけたくないという事情があれば、検察官から略式起訴の打診を受けても拒否したほうが適切であるケースもあると心得ておきましょう。
なお、略式起訴された事件では公判が開かれないため、反論を述べる機会は与えられません。だからこそ、略式起訴は検察官の判断だけでなく、処罰の対象となる被疑者自身が略式起訴による処理を承諾している必要があります。
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(4)略式起訴の条件
略式起訴となる条件は、次のとおりです。
- 簡易裁判所が管轄する、比較的に軽微な事件である
- 100万円以下の罰金または科料に相当する事件である
- 被疑者が略式手続による処理を承諾している
これらのすべてを満たしていない限り、略式起訴はできません。略式起訴の対象にならない事件では、通常どおりに起訴され、公開の裁判で裁判官の審理を受けて罪を問われることになります。
2、略式起訴の流れ
略式起訴の流れについて、順を追って説明します。
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(1)逮捕・勾留までの流れは通常どおり
刑事事件を起こして警察に逮捕された場合は、逮捕後に検察官へと送致され、勾留請求が認められた場合には最長20日間にわたり身柄拘束を受けます。ここまでの流れは、略式起訴でも通常の起訴でも同じです。
また、逮捕されずに任意で在宅捜査を受けている場合でも、取り調べ後に送検されるところまでは同じ流れで進みます。 -
(2)検察官からの確認
逮捕・勾留されている場合は、勾留期限の満期を迎える日までに、在宅事件であれば検察官による取り調べが終了したくらいのタイミングで、検察官から略式起訴についての意向を確認されます。
略式手続による処理を望む場合は、検察官にその旨を伝え、同意を示す申述書に署名・押印します。 -
(3)略式手続の開始
被疑者の承諾を得た検察官は、管轄の簡易裁判所に対して、被疑者の申述書を添えて起訴状を提出します。
略式起訴と呼ばれる手続きは、この部分にあたります。
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3、起訴後の流れ
検察官が略式起訴した後の流れについて説明します。
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(1)裁判所が書面のみで審理する
略式起訴を受理した簡易裁判所は、検察官が提出した捜査書類などをもとに、書面のみで審理を進めます。通常の刑事裁判のように、検察官と弁護人が主張をぶつけ合うようなイメージの裁判は開かれません。
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(2)略式命令の発出
刑事裁判を経た事件では、裁判の最終回となる結審の日に、有罪・無罪の判決が言い渡されます。
ところが、略式起訴された事件については被告人自身が罪を犯したことを認めており、事実を争う意思はないことが担保されているため、無罪が下されることはありません。必ず罰金または科料の刑罰が科せられます。
審理の結果は、判決ではなく「略式命令」というかたちで発出されます。公判は開かれないため、裁判官からの言い渡しに代えて郵送で通知されるのが一般的です。 -
(3)罰金・科料の納付
裁判所からの略式命令が通知されると、さらに数日後に検察庁から罰金・科料の納付書が郵送されてきます。指定された金額を金融機関の窓口で納付すれば、刑は終了です。
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(4)略式命令に不服があれば正式裁判への移行も可能
略式命令に不服がある場合は、略式命令を受け取った日から14日以内に限り、正式な裁判を申し立てることが可能です。罰金額が不当に高額である場合や、やはり刑罰を科せられることに納得できず無罪を主張したいといった場合は、改めて公開の裁判で裁判官の審理を受けられます。
4、逮捕された場合は弁護士へ相談を
逮捕されるおそれがある場合や、家族が刑事事件を起こして逮捕されてしまった場合は、ただちに弁護士に相談して必要なサポートを受けましょう。以下では弁護士へ相談すべき理由と果たす役割について説明します。
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(1)略式起訴へのはたらきかけが期待できる
事件の内容が万引き・自転車窃盗などの軽微な窃盗や、ケンカから発展したケガのない暴行・軽傷の傷害などであれば、略式起訴による処理が期待できます。
弁護士に依頼すれば、逮捕された本人が素直に罪を認めており、略式起訴による迅速な解決を希望している旨を検察官に伝えて、略式起訴の採用をはたらきかけることが可能です。
必ず罰金・科料が科せられてしまう、罪を認めたことになるので反論する機会が与えられないという不利益は存在します。
しかし、早期に身柄が釈放される可能性があるだけではなく、懲役等の身体を拘束される刑を科せられる事態を回避できれば、家族とともに生活することも、会社や学校へ通うこともできるため、社会生活への影響を最小限に抑えられるでしょう。 -
(2)正式裁判で争うためのサポート
略式起訴するかどうかは、事件を担当する検察官が判断します。
なかには、事実について争いがある事件でも「略式起訴を受け入れたほうが得策ではないか?」と打診されるケースも少なくありません。
犯してもいない罪について容疑をかけられている場合は、正式な刑事裁判の場で裁判官による審理を求めるべきです。しかし、無実であることを証明する方法を、容疑をかけられている本人だけで考えてもよい手だては見つからないでしょう。
弁護士に相談して、無実を証明するために必要な対策や、取り調べの対応についてアドバイスを得ることが得策です。 -
(3)不起訴処分の獲得を目指した弁護活動
略式起訴には、刑事裁判の手続きを簡略化し、司法と被告人の双方の負担を軽減する効果があります。このように聞けば、罪を問われている被疑者・被告人にとっては有利な制度のように感じられるかもしれませんが、刑罰・前科を回避したいと考えるなら得策ではありません。
刑罰・前科を回避したいなら、まず目指すべきは不起訴処分の獲得です。
弁護士に相談して、被害者との示談交渉を進めてもらい被害届や告訴を取り下げてもらったり、被疑者にとって有利な事情を捜査機関に示したりするなどの弁護活動を行うことで、検察官が起訴に踏み切る事態を避けられる可能性があります。
5、まとめ
略式起訴された事件では、通常の起訴によって始まる刑事裁判と比較すると被告人の負担は大幅に軽減されます。
ただし、略式起訴は軽微な事件でしか適用できないほか、事実を争うことができず確実に罰金・科料が科せられるといった不利益もあるため、安易に受け入れるべきではありません。
検察官から略式起訴の打診を受けており悩んでいる、有罪は免れない状況だが刑事裁判の負担をできるだけ軽減したいなどの状況に置かれている場合は、ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスにご相談ください。
略式起訴を受け入れるべきかどうかのアドバイスだけではなく、捜査機関へのはたらきかけや被害者との示談交渉など、事件の早期解決に向けて弁護士が全力でサポートします。
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