財産目録があれば相続がスムーズに! 作成のポイントを弁護士が解説
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裁判所が公開している司法統計によると、平成30年に那覇家庭裁判所に申し立てられた遺産分割事件数は170件でした。
近年では、自身の死後、残された家族の間でトラブルにならないよう、遺言書を作成しておきたいと考える方が増えています。遺言書の中でも相続財産については、「財産目録」を作成し、自身の財産を整理しておく方が良いと聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。
一方で、「資産家ではないのだから財産目録を作成するまでもない」と考える方も少なくないかもしれません。
財産目録は、資産の多寡に関わらず作成しておくメリットは大いにあります。本コラムでは、財産目録を作成するメリット、実際に作成するときのポイントや注意点をベリーベスト法律事務所 那覇オフィスの弁護士が解説します。
1、財産目録を作成するメリットとは
財産目録とは、被相続人(亡くなった方)の保有財産の評価額などを種類ごとに一覧にし、財産状況を全て明らかにしたものです。
財産目録の作成について法律上の義務はありませんが、財産の保有者である被相続人自身が作成しておくと、相続開始後のさまざまな手続きにおいて役に立ちます。
被相続人が財産目録を作成していない場合は、被相続人が亡くなったあと、相続人が相続財産調査をして作成するケースもあります。
では、財産目録を作成することで、具体的にどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
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(1)遺言書の作成に役立つ
遺言書作成の重要な目的のひとつに、「誰にどれだけ財産を分けるか」を明確にして、相続人同士のトラブルを回避することです。そのため、遺言書とあわせて、詳細な財産目録を作成しておき具体的に分割内容を指定しておけば、実効性の高い遺言書となるでしょう。
なお、民法改正によって平成31年1月13日以降に作成する自筆証書遺言では、財産目録の作成にパソコンや複写機の利用が認められるようになりました。
これまでのように、全て自筆で書かなければならなかった手間が省け、作成しやすくなったといえるでしょう。 -
(2)遺産分割協議が円滑に進む
相続が発生すると、遺産を誰がどの割合で受け取るのか、相続人全員で話し合います。
これを遺産分割協議といいますが、財産目録があると遺産分割協議が円満にまとまりやすいというメリットがあります。
財産の全体像が分からないと、相続人同士で「隠し財産があるのでは?」、「借金を背負わされるのはいやだ」といった疑念を生むことになりかねません。
結果、話し合いが折り合わず遺産分割調停を申し立てることとなれば、遺産に関する証明書を提出しなくてはなりません。結局は相続人たちが財産調査で財産目録を作成することになるわけです。
借金を相続しないための相続放棄や限定承認には、3か月という申告期限が設けられています。財産調査に時間がかかると、あっという間に期限が到来してしまいます。事前に財産目録を作成しておくことで、相続人は早い段階で相続方法の判断ができます。 -
(3)相続税の申告がスムーズ
被相続人には直接関係はない事柄ですが、残された家族が相続税を申告する際においても財産目録は役立ちます。
一定額以上の相続が発生すると、相続税がかかります。
相続人は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告・納付を行う必要があります。期限内に申告と納付ができなければ、加算税や延滞税が課されることがあり、大きな不利益となってしまいます。
財産目録があれば相続の内容が早く確定し、相続税の算出もスムーズにできるでしょう。また、相続税申告には財産明細を記載する必要があるので、財産目録を参照できると非常に便利です。
あなたの死後、残された親族のためにも、生前に財産目録をつくっておくことは重要と言えます。
2、財産目録の作成手順
では、実際に財産目録を作成する際の流れと、注意すべきポイントを解説します。
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(1)保有財産をリストアップする
まずは、資産と負債を含めた全ての保有財産を洗い出し、リストアップします。
具体的に、どのような情報が必要になるのかをご紹介します。
【資産】
●預貯金、現金
金融機関名、支店名、口座種類、口座番号、残高を記載します。特にネット銀行など通帳のない銀行口座は、存在自体が把握しにくくなるので、しっかりと情報を残しておきましょう。
また、現金は必ず保管場所を記載しておきます。
●有価証券
株式や社債・国債などを保有している場合は、取引証券会社名、支店名、種別、銘柄、株数・口数、発行会社名、証券番号、それぞれの評価額などの詳細を記載しておきましょう。
●不動産
土地、マンション、駐車場などの不動産は、種類、地番、面積、評価額などを記載します。これらの情報は、法務局で不動産登記簿の「全部事項証明書」を取得すれば確認できます。全部事項証明書には、所有権の移転や抵当権の設定・抹消など過去の履歴も全て記載されていますので、必ず確認しましょう。
●動産
自動車、バイク、貴金属、骨董(こっとう)品など、換金価値のある動産は、種類と評価額を記載します。
車であれば、メーカー名、車種型番、ナンバー、所有者、評価額などを記載しておくと良いでしょう。
なお、査定に出すことで現時点での価値を把握することができます。
●債権
貸付金、税金の還付金債権、未収報酬債権など、金銭を受け取れる権利もプラスの財産となります。事業を営む方は事業用財産、著作権や特許権などがあればこれも記載します。
【負債】
負債に該当するものとしては、借金、住宅ローン、自動車ローン、クレジットカードの未払い分、税金など公租公課の債務、保証債務などが考えられます。
それぞれ、債務種別、債権者名、借入残高、完済予定日などを記載しましょう。
ローンの場合は、借入先に残高証明書を発行してもらうことで正確な残高を把握することができます。個人に借金しているような場合は、相手の氏名、住所、連絡先などを記載しておきましょう。 -
(2)財産目録として一覧表にする
財産目録の形式に、法律上の定めはありません。
財産の種類が少ない場合には一枚の用紙にまとめても問題ありませんが、資産と負債は分けて、それぞれの合計額が分かるように記載すると良いでしょう。
改正民法が施行された平成31年1月13日以降は、財産目録をパソコンで作成することが可能となりましたので、エクセルなど表計算ソフトを利用すると便利です。 -
(3)自筆以外の財産目録は全ページに署名押印する
従来は、財産目録を含め、自筆証書遺言は自筆作成が必要でしたが、前述のとおり財産目録に関しては印刷や通帳の複写など自筆でない手段での作成が認められました。
ただし、自著でない目録を作成する場合は、その内容が他者による改ざんがないと証明するため、全ページ(両面印刷なら表裏)に署名と押印が必要です(民法第968条 第2項)。
署名押印がなければ、遺言書における財産目録としては無効となるため、忘れずに対応しましょう。
3、財産目録作成を弁護士に依頼するメリット
財産目録の作成は、弁護士に依頼することで多くのメリットが受けられます。
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(1)対応を一任できる
全ての財産を洗い出すためには、さまざまな手続きが必要になるほか、窓口を渡り歩いたり、問い合わせをしたりする必要があり、非常に手間のかかることです。
その点、弁護士は確認すべきポイントや、行政への各種申請・手続きを熟知しているため、迅速に漏れなく情報をそろえてもらえるでしょう。
実際の作業を一任できるので、内容の確認など最小限の手間で済みます。
また、目録の内容に間違いがあれば、遺産分割協議書が無効になる可能性もあり、遺族に大きな負担を強いる結果にもなりかねません。正確に作成するためにも、弁護士へ依頼することをおすすめします。 -
(2)遺言書・遺産分割協議書の作成なども依頼できる
弁護士に依頼するにあたっては、遺言書の作成など相続にまつわる関連事項も同時に依頼できるので、非常に合理的です。
遺言書は目録とは異なり、民法によって細かい規定が設けられています。弁護士は遺言書についても熟知していますので、助言を受けつつ作成することをおすすめします。
また、遺言書を作成するにあたっては、相続人の権利である「遺留分」などにも留意する必要があります。誤った知識で作成してしまえば、遺言書としての役割を果たせずに、遺族間のトラブル原因にもなりかねません。
弁護士のアドバイスを得て作成しておけば、そういった点も解消できるでしょう。 -
(3)トラブルになったときに対応を依頼できる
弁護士を遺言執行者に指定しておけば、相続時に相続手続きをスムーズに実行してもらうことができます。
また万が一、遺族間で相続トラブルが発生した場合も、財産目録の作成から関わった弁護士がいれば事態の把握が早く、迅速な対応が望めるでしょう。
遺族が相続で揉めないためにも、生前から弁護士のサポートを得ておくことは得策といえます。
4、まとめ
財産目録は、自身の死後に家族が困らないためにも、ぜひ作成しておきたいものです。しかし、財産調査を一般の方が行うには時間と労力がかかり、法律上どのような扱いになる財産なのかなど、判断に迷うこともあるでしょう。そのため、相続の準備をする際は弁護士など専門家のサポートを受けるとスムーズです。
ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスでは、相続にまつわるご相談を広く受け付けております。また、必要に応じて税理士とも連携をとることができますので、相続問題をワンストップで対応できます。
相続問題の対応実績が豊富な弁護士が全面的にサポートしますので、ぜひご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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