デートDVかも……? 恋人間でも成立するDVの条件や具体例を解説
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平成30年10月、交際中の男性から暴行・脅迫・借金の強要などを受けた女性が那覇地裁に損害賠償を請求した事件で、女性側の勝訴が確定したというニュースが報じられました。
男性はスポーツチームの監督、女性はチームに所属している選手で、約10年間にわたる交際を通じてたびたび被害に遭っていたそうです。
配偶者暴力、いわゆる「DV」は、婚姻関係や事実婚・内縁関係が対象とされてきました。
ところが、近年は交際中の男女間における暴力が問題となっており、いわゆる「デートDV」は社会問題として注目されています。
本コラムでは「デートDV」について注目しながら、デートDVの定義や法律で身を守る方法について、那覇オフィスの弁護士が解説していきます。
1、デートDVとは
「デートDV」は、近年になって特に注目されるようになった用語です。
あいまいに理解していると、自分が受けている行為がDVなのか、それともDVにはあたらないのかの判断ができなくなりますので、ここで定義や具体例をチェックしておきましょう。
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(1)デートDVの定義
デートDVとは「交際している恋人間で起きる暴力」を指します。
DVとはドメスティック・バイオレンス(Domestic Violence)の略語で、配偶者暴力や夫婦間暴力を指すため、本来的には婚姻関係のある夫婦の間のみに用いられる用語です。
ただし、婚姻関係を結んでいない事実婚・内縁関係の間でも暴力が問題になるため、DVには事実婚・内縁関係にある男女間での暴力も含まれています。
デートDVの「デート」とは、交際中の男女間のデートを指しています。
つまり、夫婦や事実婚・内縁関係ではない交際中の男女間での暴力を「デートDV」と呼ぶのです。 -
(2)デートDVに該当する具体例
デートDVに該当する暴力は、本来のDVにおける暴力の定義と同じです。
●身体的暴力
殴る、蹴る、強く押さえつける、髪の毛をひっぱる、物を投げるなど
●精神的暴力
「バカ」「ブス」などの侮辱的な言葉をなげかける、無視する、脅すなど
●社会的制限
メールや電話の履歴をチェックする、交友関係を規制するなど
●性的暴力
セックスの強要、避妊に非協力、わいせつな動画や写真を無断で撮影するなど
●経済的暴力
一緒に暮らしているのに生活費を渡さない、デート費用を負担させる、アルバイトを禁止するなど
DVといえばまずは身体的暴力をイメージする方が大半ですが、暴言や侮辱的な言葉で精神的な圧力をかける行為や行動を制限するなどもDVとみなされます。
また、セックスに応じないと不機嫌になって暴力的になる、異常な性行動を強要されるなどのほか、経済的に束縛して自由な行動ができないようにする場合もDVとみなされる可能性が高いでしょう。
2、デートDVが起きる原因
お互いに好意を持っているからこそ、彼氏・彼女としての交際関係が成立するはずなのに、なぜ暴力行為や威圧的な行為を加えてしまうのでしょうか?
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(1)愛情表現だと勘違いしている
デートDVの加害者の多くが、暴力行為について「愛情表現だ」と誤解しています。
また、長く苦しんでいる被害者も「相手なりの愛情表現だから」と感情を押し殺して耐えている傾向があります。
愛情を抱いている相手に対して、いつくしみではなく暴力行為をはたらくのであれば、それはすでに愛情とは呼べないのかもしれません。 -
(2)強烈な支配欲
支配欲が強い人ほど、交際相手の自由な行動が気になってしまい、耐えかねてしまうものです。
「電話がかかってきたら1分以内に折り返せ」「どこにいるのか常に把握できるようにGPSで確認する」といった行動があれば、強烈な支配欲が原因になっていると考えるべきでしょう。 -
(3)犯罪であることを理解していない
デートDVの加害者の多くは、自分の暴力的な行動が犯罪に該当するという自覚を持っていません。
親が子どもに対して「しつけ」と称して暴力を振るうのが虐待であるのと同じです。
愛情があるからこそ殴ってしつける、束縛は当然というゆがんだ思考が、悪質なデートDVを引き起こしてしまうこともあります。
3、デートDVはDV防止法の対象になるのか?
デートDVは法律でいうDVにあたらない、という話を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、この情報には間違いがあります。
一定の条件を満たしていれば、交際関係にある男女間でも法律が規制するDVとみなされ、被害者が保護され、加害者が処罰を受けることになります。
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(1)恋人間でも保護対象になるケースがある
平成25年の法改正によって、DV防止法の保護命令制度が拡大され、交際関係にある男女間のDVについて規定されました。
【配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(通称:DV防止法)】
第28条の2
第二条及び第一章の二から前章までの規定は、生活の本拠を共にする交際(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものを除く。)をする関係にある相手からの暴力(当該関係にある相手からの身体に対する暴力等をいい、当該関係にある相手からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が当該関係を解消した場合にあっては、当該関係にあった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含む。)及び当該暴力を受けた者について準用する。
少しわかりにくいので簡単に説明すると、次の条件を満たしていればこの法律で定めるDV被害者とみなされます。
- 生活の本拠をともにする交際関係にあるか、そのような関係にあったこと
- 上記の関係にある相手から暴力を受けていること
「生活の本拠をともにする交際」とは、いわゆる同棲関係を指します。
お互いが自宅で生活していて、週末だけ相手の家で寝泊まりするようなケースでは、法律の保護は受けられません。
また、暴力行為が同棲中、または同棲を解消したあとにも続いている場合には保護対象となりますが、同棲を解消したあとで暴力がはじまった場合は対象外です。 -
(2)元恋人ならストーカー規制法で身を守れることもある
交際関係を解消したあとで、一方が復縁を迫り、または破局を恨みに感じて暴力行為をはたらくようになった場合は、DV防止法ではなく「ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)」によって被害者保護や加害者処罰が可能です。
具体的には、自宅や職場の周辺におけるつきまといや待ち伏せ、押しかけ等の行為、粗暴な言動をする行為、名誉を傷つける内容を告げる行為、性的に辱める画像を送りつける行為などが広く規制されています。
4、デートDVの被害を相談できる窓口
デートDVの被害を受けている方は、加害者との関係や交際の経歴などによってDV防止法やストーカー規制法による保護が受けられます。
裁判所が保護命令を下せば、被害者本人や親族などへの接近禁止、連絡の禁止などによって保護されるほか、これに違反した加害者には厳しい罰則が設けられているのです。
デートDVの被害を受けている方は、まずは相談できる窓口で被害の状況を説明しましょう。
那覇市では、市の子ども生活福祉部が主導となって女性が被害を相談できる窓口「女性相談所」を開設しています。専門の女性相談員が対応してくれるので、まずは自分が置かれている状況を説明し「DVにあたるのか」「保護を受けられるのか」などを相談するとよいでしょう。
また、明らかな暴力がある、身体や生命に危険が生じているという場合には、管轄の警察署への相談を優先したほうがよいかもしれません。
実際にDVにあたるのかの相談だけでなく、暴行・傷害などの事件として対応を求めるのであれば、警察に被害届を提出したほうが賢明でしょう。
警察経由で市や県の保護を受けるルートもあるので、緊急性が高い場合は警察への相談がおすすめです。
また、相手に対する損害賠償請求なども検討できるので、その際は弁護士への相談も大切です。
代理人として加害者と交渉してもらうといったサポートが受けられるだけでなく、警察に提出する告訴状の作成なども依頼できます。
5、まとめ
旧来のDV防止法では、同棲・交際関係における暴力は保護対象になっていませんでした。
これまでに多くの方が被害に苦しみながらも、法律の規定がないことによって十分な保護が受けられず泣き寝入りをしていたはずです。
現代では、社会の変化に応じてDV防止法による保護対象が拡大し、一定の条件を満たせば婚姻関係にない男女間での「デートDV」も保護・処罰の対象となりました。
ご自身の状況をみて「デートDVを受けている」と気づいた方、恋人からの暴力などにお悩みの方は、関係機関への相談のほか、具体的な解決を目指すのであれば弁護士への相談を検討しましょう。
デートDVなどの男女間トラブルの解決は、ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスにお任せください。男女間トラブルの解決実績を豊富に持つ弁護士が、デートDVの被害からの脱出や加害者に対する損害賠償請求まで、全力でサポートします。
デートDVは犯罪行為です。
「愛情表現だ」と信じてひとりで耐えても解決しないので、まずはベリーベスト法律事務所那覇オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています