【前編】飲酒運転の量刑や違反点数、逮捕後の流れは? 那覇オフィスの弁護士が解説

2019年03月26日
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【前編】飲酒運転の量刑や違反点数、逮捕後の流れは? 那覇オフィスの弁護士が解説

沖縄県では長年、飲酒がらみの事故の割合が全国ワーストでした。平成29年にようやくワーストから脱却したものの、那覇市内では忘年会や送別会のシーズンには一晩で10人以上が飲酒運転で逮捕されてしまったこともあります。

「捕まったことはないから大丈夫」「友人もやっている」などと軽い気持ちで飲酒運転をしてしまうと、警察に逮捕され、人生が一変してしまうかもしれません。

では飲酒運転で逮捕されると、どんな刑罰を受けるのでしょうか?那覇オフィスの弁護士が解説します。

1、飲酒運転とは

「飲酒運転」という言葉はよく使われますが法律用語ではなく、飲酒運転という罪名もありません。
では飲酒運転とはそもそもどのような行為で、何が罪に問われるのでしょうか?

  1. (1)飲酒運転とは

    飲酒運転とは、お酒を飲み、体内にアルコールが残った状態で自動車やバイク等を運転することです。
    大きな事故につながる可能性があるため、道路交通法第65条で禁止されています。

    違反すると警察に逮捕されたり刑罰を受けたりする可能性があります。
    また違反点数により、免許停止や取消の行政処分を受けることもあります。

  2. (2)道路交通法の飲酒運転は2種類

    道交通では飲酒運転を次の2種類に分類しています。

    • 酒気帯び運転
    • 酒酔い運転

    これらはたとえ事故を起こさなくても、アルコールが残った状態で運転するだけで違反の対象となります。
    飲酒運転で事故を起こし、人をけがさせた場合には、過失運転致死傷罪危険運転致死傷罪に問われることがあります。

    近年、危険な運転や飲酒運転による悲惨な事故が多発しています。
    そのため法改正や新しい法律の制定により、罰則はどんどんと厳しくなっています。

  3. (3)酒気帯び運転と酒酔い運転の違い

    酒気帯び運転は、呼気1ℓ中0.15mg以上のアルコールが含まれている状態で運転することです。

    呼気中のアルコール濃度は通常、警察のアルコール検知器を使って測定されます。
    飲酒検問などで基準値以上の数値がでると、その場で検挙されます。

    一方の酒酔い運転には、アルコール濃度による基準はありません。
    アルコールの影響により、正常に運転できない状態にあるかどうか」で判断されます。

    判断基準が難しいと思うかもしれませんが、たとえば酒臭くてろれつが回っていない、まっすぐ歩けない、などの状態にある場合は酒酔い運転が疑われます。
    より悪質で事故を起こす可能性も高いため、酒気帯び運転よりも厳しく処罰されます。

2、飲酒運転の量刑と違反点数

飲酒運転は、事故を起こさなければいいというものではありません。運転すること自体がダメなのです。
では違反するとどうなってしまうのでしょうか?刑事処分と行政処分、両方を確認していきましょう。

  1. (1)酒気帯び運転はアルコール濃度が基準

    酒気帯び運転の量刑は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
    呼気中のアルコール濃度が0.15mg以上であれば、どれほど数値が高くても同じです。

    ただし行政処分は、次のようにアルコール濃度を基準として違反点数を計算します。

    • アルコール濃度0.15mg以上0.25mg未満:13点
    • アルコール濃度0.25mg以上:25点

    違反点数13点は、前歴や他の違反がなければ90日間の免許停止です。
    25点は、たとえ前歴がなくても免許取消です。

  2. (2)酒酔い運転は罰則が重く、免許取消も

    酒酔い運転の量刑は「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」です。
    より悪質なため、酒気帯び運転よりもかなり重くなっています。

    また違反点数も35点と高く、一回で免許取消です。
    アルコール濃度による点数の違いはありません。

  3. (3)飲酒運転での事故は罪が重い

    飲酒運転で事故を起こし、人をケガさせたり死亡させたりしてしまうと、さらに重い罪に問われます。

    悪質な飲酒事故が続いたため、平成26年5月に新しく「自動車運転死傷行為処罰法」が制定され、罰則がより厳しくなりました。

    この法律では、アルコールの運転への影響の程度によって適用される罪名が違ってきます。

    • わき見運転など過失による人身事故(第5条)
      → 過失運転致死傷罪
    • アルコールの影響で正常な運転が困難な状態での人身事故(第2条)
      → 危険運転致死傷罪
    • アルコールの影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態での人身事故(第3条)
      → 危険運転致死傷罪

    過失運転か危険運転か、どちらが適用されるかはアルコール濃度などの基準はなく、アルコールが運転に影響を及ぼしたかどうかで判断されます。
    飲酒運転で人身事故を起こしたからといって、すべてが危険運転致死傷になるわけではないのです。

  4. (4)危険運転致死傷罪の量刑とは

    危険運転致死傷罪の量刑は、アルコールの影響の程度や事故の結果によって違ってきます。

    • アルコールの影響で正常な運転が困難な状態での人身事故(第2条)
      相手を死亡させた場合:1年以上の懲役(最高20年)
      相手にけがをさせた場合:15年以下の懲役
    • アルコールの影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態での人身事故(第3条)
      相手を死亡させた場合:15年以下の懲役
      相手にけがをさせた場合:12年以下の懲役

    なお、過失運転致死傷については「7年以下の懲役または禁錮、もしくは100万円以下の罰金」となっています。

  5. (5)同乗者や酒の提供者が処罰されることも

    飲酒運転で罰せられるのは、運転者だけではありません。

    道交法では「飲酒運転を助長した」として、次の行為も処罰の対象としています。

    • 飲酒運転をすることを知りながら車に同乗
    • 運転をする可能性がある人に酒を提供
    • 飲酒した人に車を提供

    頼んだ友人も罪に問われることがあるのです。

3、注意!飲酒運転の逮捕は当日だけじゃない

飲酒運転をした日に事故を起こしたものの「警察に見つからなかった」と安心していてはいけません。後日、家に警察が来て逮捕されるかもしれません。

  1. (1)飲酒運転での逮捕は現行犯が多い

    飲酒運転は警察による飲酒検問や、物損・人身事故を起こしたことをきっかけに発覚することが多い傾向にあります。

    警察による飲酒検問はあちこちで実施されています。道路にパトカーや警察官を配置し、通行する車を次々と止めて調べていきます。
    なお拒んだり妨害したりすると、3ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

    基本的に抜き打ちで実施され、忘年会シーズンなどは頻繁に行われるため、飲酒後の帰宅途中で検挙されるケースは少なくありません。

    また車で事故を起こした場合、人身事故でも物損事故でも必ず警察を呼ばなければいけません。
    その際に酒の臭いがすれば飲酒運転を疑われます。

    どちらも警察がその場で息の臭いを確認したり、アルコールチェッカーを使って測定したりして判断するため、基本的には現行犯逮捕になります。

  2. (2)逃げても後日逮捕されることがある

    飲酒運転による人身事故では、飲酒の発覚を恐れたり、アルコール濃度を下げようとしたりしてその場から逃げてしまうケースがあります。

    逃げて時間が経った後では、事故当時にアルコールが体内にあったかどうかを立証することが難しくなります。
    そこでこういったいわゆる「逃げ得」を許さないために、「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」が新設されました。

    これにより飲酒運転で人身事故を起こし、アルコールを抜くために逃げるなどした場合には、罪に問われることになりました。
    罰則は「12年以下の懲役」です。

    事故現場から逃げてホッとしていても、警察はしっかり調べて運転者を見つけ出します。
    アルコールが残っていなかったとしても、逮捕される可能性はあるのです。>後編はこちら

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