脱税で逮捕される場合の流れ|罰則や行政処分などについても解説

2024年09月02日
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脱税で逮捕される場合の流れ|罰則や行政処分などについても解説

令和5年1月、沖縄市で内装業を営む夫婦が所得を過少申告し、8500万円を脱税しようとした疑いで、沖縄国税事務所が那覇地検に告発したとニュースになりました。

中小企業では、できるだけ多くの経費を計上して税金が少なくなるように心がけるものですが、架空の経費を計上すれば紛れもなく「脱税」になります。昨今、強力に推し進められているキャッシュレス決済も、実は脱税防止を強化する目的があるともいわれています。

「発覚しなければ問題ない」と考えている方がいるかもしれませんが、税務職員は税のプロフェッショナルなので、調査を受ければ、ほぼ確実に発覚すると考えるべきでしょう。もし、税務調査が長引いていれば、何らかの不審点があると評価され、脱税の疑いが持たれていると考えておくべきです。

本コラムでは、脱税の疑いがかけられているのではないかと不安を感じている方のために、脱税事件の調査から刑事手続きまでの流れや、どのような罪に問われるのかなどを、ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスの弁護士が解説します。


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1、脱税で適用される法律と罰則

ニュースなどではひと口に「脱税」とまとめられますが、ケースによって適用される法律が異なります。

  1. (1)脱税は各税法によって処罰される

    脱税事件は、どの租税が対象になっているのかによって適用される法律が異なります。
    所得税が対象であれば「所得税法違反」に、法人税が対象の場合は「法人税法違反」になるほか、「消費税法違反」などでも処罰されることがあります。

  2. (2)脱税の罰則

    脱税による刑事罰は、適用される法律ごとに定めがありますが、基本的には10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはその両方が科されるものと規定されています。犯罪の様態によっては、懲役刑と罰金刑の両方が科せられることもあるのです。

  3. (3)脱税の行政処分

    脱税が発覚すると、刑罰を受けるだけではなく、国税通則法に基づき行政処分も科せられます。脱税における行政処分とは、対象となった本税の納付に加えて以下のような付帯される税金を指します。

    • 過少申告加算税:実際の税額よりも少ない額で申告した場合、10~15%が加算されます。
    • 無申告加算税:申告期限までに申告しなかった場合、15~20%が加算されます。
    • 不納付加算税:源泉所得税を期限までに納付しなかった場合に原則10%、自主的に納付すれば5%が加算されます。
    • 重加算税:意図的な仮装・隠ぺいなど、悪質な脱税に課せられる加算税で、追徴税の35~40%が加算されます。
    • 延滞税:納付期限までに納税されない場合、日数に応じて課税されます。
    • 利子税:一括で納税できない場合、未納のものに対して課税されます。

2、脱税事件の刑事手続きの流れ

脱税事件を起こした場合、どのような流れで刑事手続きを受けることになるのでしょうか?

  1. (1)調査

    調査は「税務署」による税務調査と、「国税局」による査察調査の2種類があります
    一般的には、税務署は中小企業や個人、国税局は大企業や悪質な納税者に対応するものだと考えておけばよいでしょう。

    税務調査は、5~10年に一度程度の頻度で実施されるもので、調査の対象になったからといって必ず「疑われている」というものではありません。
    急激な黒字・赤字への転換、同業他社と比べて多額の経費が計上されている、不動産の売却など資産に大きな動きがあるなど、何らかの変化が生じた年度は対象になりやすいといわれています。

    これに対して査察調査は、検察庁への告発を前提になされるもので、令状の発布を受けて行われます。
    税務調査はあくまでも調査対象者の任意の協力の下で行われるのに対して、査察調査は強制的に行われるという点も異なります。

    これらの調査は内部・外部からの情報提供に基づいて実施される場合もあります。

  2. (2)告発

    調査で悪質な脱税が発覚した場合、税務職員は公務員に課せられた告発義務に従って検察官に告発します。
    ここでいう告発とは、脱税の首謀者や関係者を除く第三者が、脱税の事実を捜査機関に申告して処罰を求めることをいいます。
    脱税の事実を知る内部関係者が、秘密のうちに税務職員に申告する「内部告発」と区別するために、一般的には「刑事告発」と呼ばれます。

    窃盗や暴行・傷害などの一般事件における告発は警察が受理して捜査しますが、公正取引委員会や国税局などによる告発は、検察庁の特別捜査部や特別刑事部が受理します。

    国税庁が公表した「令和5年度 査察の概要」によると、査察調査を受けた企業の66.9%が告発を受けるに至っており、査察調査を受けた企業等は高い確率で刑事告発を受けているといえます。

  3. (3)逮捕・起訴

    国税局の調査結果をもとに検察官が捜査をおこない、脱税の容疑が濃厚であれば、裁判所が発付した逮捕状に基づき逮捕される可能性があります。

    脱税事件における重要な証拠である証憑(しょうひょう)書類は、ほとんどのケースで容疑者側の管理にあるため、これらの証拠が隠滅されることを防止するため逮捕に至るケースが多数です。
    また、逮捕と並行して会社や自宅などの捜索差し押さえ、いわゆる「家宅捜索」や「ガサ入れ」がおこなわれることがあります。ただし、すべての事件が逮捕に至るわけではなく、逮捕されないまま在宅の任意捜査になることもあります。

    検察官に逮捕されると、取り調べののち逮捕から24時間以内に起訴・不起訴が決定されます。
    この時点で検察官が起訴・不起訴を判断できない場合は、さらに取り調べ・捜査を進めるために裁判官へ勾留請求をおこない、身柄拘束の延長を求めます。勾留が認められた場合、原則10日間、最長で20日間の身柄拘束が続き、満期を迎えるまでに再び起訴・不起訴が決定されます。

  4. (4)裁判

    検察官に起訴された場合、被告人として裁判で刑事責任を問われることになります。
    有罪となれば、法定刑の範囲内で刑が決定されます。

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3、脱税の主な態様

脱税の主な態様をみていきます。
ここに挙げる行為に該当する場合、脱税の容疑がかけられて刑事告発を受けるおそれが高まるでしょう

  1. (1)売り上げの過少申告

    脱税のもっとも典型的な態様が「過少申告」です。
    伝票操作や現金取引などによって売上額を少なく偽装し、課税額を低くします。

  2. (2)経費の水増し申告

    「水増し申告」も典型的な脱税の態様だといえます。
    不正・架空な経費を計上することによって、実際よりも多くの経費がかかったように偽装する方法です。

  3. (3)無申告

    近年、増加してきたのが「無申告」です。
    故意に申告そのものをしない方法ですが、以前は無申告では高い確率で査察の対象になってしまうため敬遠されていました。

    近年では、インターネットによる事業展開、株式やFX・先物取引などの投資商品、仮想通貨など、収入を得る方法が多様化しており「申告しなくても発覚しないだろう」と考える方が増えたようです。いわゆる「所得隠し」は、税務職員の手にかかれば大多数が発覚してしまうので、厳に慎むべきでしょう。

  4. (4)消費税の還付

    「消費税の還付」を悪用した脱税も、近年は増加傾向にあります
    企業は、仕入れにおいては消費税を支払い、販売においては消費税を受け取る立場です。つまり、受け取り消費税から支払い消費税を差し引いた金額を納税することになります。

    この仕組みを悪用して、次のような行為が横行しています。

    • 自社の社員をダミー会社から派遣された非正規社員と偽装して、ダミー会社に外注費とともに消費税を支払っていることにする
    • 架空の仕入れで支払い消費税を計上し、消費税が課税されない海外・免税店での販売を装って受け取り消費税を0にすることで納税額の圧縮や還付を受ける

4、脱税の疑いをかけられたら弁護士に相談を

国税局の調査が長引いていて「脱税を疑われている」と不安を感じているのであれば、すぐに弁護士に相談しましょう。

  1. (1)自身がおかれている現状を正確に知ることができる

    弁護士に相談すれば、現在あなたやあなたの会社が置かれている現状を正確に把握できるでしょう。
    実際にいくらの脱税になるのか、追徴税や行政処分はどのくらいになるのか、逮捕の可能性はあるのかなど、専門的な知識と経験をもとにアドバイスが可能です。

  2. (2)身柄拘束を免れ、または刑の減軽が期待できる

    脱税が発覚しても、必ず逮捕されるわけではありません。
    素直に不正な申告があったことを認める、またはわざと申告しなかったわけではないという状況があり、追徴税を納付することで、刑事処罰の回避が期待できます。

    脱税は故意、つまり「わざと」不正な申告・不申告をすることで成立し、事務手続き上のミスや錯誤によって未納となった場合は「申告漏れ」にあたります。申告漏れにあたる場合は、刑事処罰を受けることはありません。

    弁護士に依頼すれば、税務調査・査察調査や取り調べに弁護士が立ち合い、告発・逮捕・起訴を回避するために有効な弁明をおこなえます
    過去に国税局が査察をおこない告発した事件のほとんどは、裁判で有罪判決を受けています。令和5年度中に行った189件の裁判においては、国側敗訴割合はわずか7.6%でした。この数字を考えれば、いかに「告発に至らないこと」が大切なのかを理解できるでしょう。

    また、脱税容疑で告発され起訴されてしまった場合でも、故意に悪質な脱税をしたのではないことを具体的に証明する証拠をそろえて抗弁し、減刑を目指した弁護が可能となります。

  3. (3)社会的な信用失墜を防げる

    脱税が引き起こすもっともおそろしいリスクは「社会的な信用の失墜」でしょう。
    特に、代表者の逮捕・起訴に至ってしまえば、取引先等からの会社の信用に大打撃を被ってしまいます。
    金融機関からの信用も失い、融資が受けられなくなるおそれがあるほか、代表者に前科がついてしまえば、事業種別によっては会社の各種の許認可が取り消されてしまうリスクもあります。

    弁護士に依頼すれば、告発・逮捕といった社会の耳目を集めてしまう事態に発展する前にトラブルを解決できるため、社会的な信用失墜を回避できることが期待できます。

5、まとめ

脱税は直接的な被害を受ける人がいない、いわゆる「被害者なき犯罪」のひとつだといわれていますが、社会的な法益を侵害しているため、厳重に処罰されます。
法定刑は一般的な刑法犯罪と比較すると非常に重たく、ひとたび起訴されると有罪率も高いため、なんとしてでも国税局による告発されるような事態は避けるべきでしょう。

脱税の疑いをかけられている、税務署・国税局の調査を受けるにあたって脱税が発覚するおそれがあるなど不安がある方は、ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスにご相談ください。
脱税トラブルの対応実績が豊富な弁護士が、告発・逮捕・起訴の回避に向けて全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています