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短時間正社員制度とは? 企業が知っておきたいメリットと導入の流れ

2020年07月09日
  • 労働問題
  • 短時間正社員制度
短時間正社員制度とは? 企業が知っておきたいメリットと導入の流れ

沖縄県は、正社員の募集が少ないにもかかわらず、新卒者の3年内の離職率が全国と比較して高いという特徴があるそうです。
沖縄労働局では「離職後は非正規社員となる割合が大きく、将来的な賃金格差を生むリスクが高い」と問題視していますが、頭を悩ませているのは行政だけではありません。
定着率の高い人材を予測して獲得するのは困難なので、企業の人事担当者は常に人材確保に頭を悩ませることになります。

ライフスタイルの多様化により、さまざまな事情で人材が流出してしまう事態が発生しますが、ひとつ方策として「短時間正社員制度」が注目されています。
短時間正社員制度を導入すれば、フルタイムで勤務する正社員と同等またはそれ以上の労働意欲や能力がありながらも、フルタイムで勤務するのが困難な人材を有効に活用できるでしょう。

本コラムでは「短時間正社員制度」に注目して、制度の概要、導入のメリットや導入方法などについて、那覇オフィスの弁護士が詳しく解説します。

1、さまざまな働き方を実現できる! 短時間正社員制度とは

短時間正社員制度を、ごく簡単に説明すると「労働時間が短く設定された正社員」だと解釈することができます。
従来の考え方では、正社員とは「フルタイムで働く労働者」という解釈でした。
フルタイム、つまり法定労働時間として定められている、1日8時間・1週40時間を限度に所定労働時間の勤務を約束した労働者こそが正社員だという考え方は、いまだに多くの事業所で当然と受け止められているでしょう。
この考え方を緩和し、正社員としての処遇を受けながらも短時間勤務を認めたものが短時間正社員です。

厚生労働省が示している短時間正社員の定義は次のとおりです。

  • フルタイム正社員と比較して1週間の所定労働時間が短い正規型の社員
  • 期間の定めのない労働契約(無期労働契約)を締結している
  • 時間あたりの基本給および賞与・退職金などの算定方法が同種のフルタイム正社員と同等


働き方改革が進められるなか、労働者の「働き方」は時代の流れに応じて大きく変化しています。
その端的な例が女性の働き方です。
結婚、出産、育児というライフステージの変化が仕事の進退に大きく影響するため、業務に対して強い意欲をもっている女性や、職務に必要なスキル・資格をもって高い能力を発揮する女性までもが離職せざるを得ない状況が続いていました。

短時間正社員制度を導入することで、次に挙げるような効果が期待できます。

  • 出産・育児による女性社員の離職防止
  • 親の介護による社員の離職防止
  • 自己啓発やキャリアアップなどの機会提供につながる
  • 心身の健康不全からの職場復帰がスムーズになる
  • やむを得ず離職して埋もれた有能な人材を新規に獲得できる
  • 専門的なスキルや知識をもつ高齢労働者の雇用
  • パートタイム従業員のモチベーションアップにつながる
  • 無期労働契約への転換における選択肢となる

2、短時間正社員制度を導入するメリット

短時間正社員制度は、使用者である企業にとっても、労働者にとっても、双方に大きなメリットをもたらします。

  1. (1)企業におけるメリット

    短時間正社員制度が企業にもたらすメリットをみていきましょう。

    • 労働意欲や能力の高い人材が確保できる
    • 業務の効率化によって生産性が向上する
    • 満足度の高い働き方を提供することで定着率が高まる
    • 高齢者雇用安定法や労働契約法などの法改正に対応できる


    企業として、特に強くメリットを実感できる点としては、人材確保と労働者の定着が挙げられるでしょう。
    高い意欲や能力をもっていながらも、出産・育児や介護などの事情によってフルタイムでは働けなくなってしまった労働力を手放さずに確保できるほか、有能な人材の新規獲得も期待できます。

    また、パートタイム労働者をはじめとした非正規雇用の労働者を、企業内でキャリアアップさせる目的で短時間正社員とした場合は、キャリアアップ助成金の支給対象となります。

  2. (2)労働者におけるメリット

    労働者におけるメリットは次のとおりです。

    • ライフスタイルの変化による失職を回避できる
    • 正社員としての登用が実現する
    • 給与や社会保障などの処遇が改善される
    • 長時間労働が解消される


    出産・育児などライフスタイルの変化や親の介護などの事情で「働きたいのに働けない」という悩みを抱えていた労働者にとっては、新たな働き方として非常に有益なものとなります。
    また、これまで非正規雇用として勤務していた労働者にとっては、給与・社会保障などの面で処遇が改善されるという点も、大きなメリットとなるでしょう。

3、短時間正社員制度を導入する際の流れ

短時間正社員制度の導入は、次のような流れで進みます。

●導入の目的を明確化する
まず「なぜ短時間正社員制度を導入するのか」の目的を明確化しましょう。
自社の現状や抱えている問題、将来的な課題をピックアップするだけではなく、労働者のニーズを把握したうえで制度導入に向けた計画案を立てる必要があります。
労働者のニーズを把握するために、個々の労働者からのヒアリングやアンケートの実施も有効です。

●対象者に期待する役割を検討する
短時間正社員に対して期待する職務内容や適用の期間、労働時間を検討します。
企業と労働者の双方がもつニーズを踏まえて、適切かつ柔軟に役割を設定しましょう。

●対象者の労働条件を検討する
次に給与・賞与・退職金などの賃金面や、成果目標の達成・能力や行動に対する評価・昇進や昇格といった待遇面について検討します。
同じ職種・職位のフルタイム正社員と比較したときに「量的」な部分は労働時間に応じて減らしながら、「質的」な部分は区別しないのが原則です。労働者に不満を生じさせないためにも、慎重に設定する必要があります。

●将来的なフルタイム正社員への復帰・転換について検討する
短時間正社員制度は、個々の労働者が抱える事情に対してフレキシブルに対応できるものであるべきです。
たとえば、出産・育児のために短時間正社員へと転換した女性社員が、子どもの成長によって時間的な制約が解消された時点でフルタイム正社員へと復帰する仕組みなどの構築が求められます。

●制度を導入し周知する
実際に短時間正社員制度を導入する際は、制度の対象者だけでなく、対象外の労働者や管理者である労働者にも十分に周知して、制度への理解を深める必要があります。
制度への理解がないと、対象者と対象外の労働者との間にあつれきが生じてしまうおそれがあるためです。
社内報での制度紹介やパンフレット・マニュアルの配布が有効です。
また、就業規則に労働条件を明文化しておくことで、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。

4、短時間正社員制度を導入する際の注意点

短時間正社員制度を導入する際は、大きく3つの点に注意する必要があります。

  1. (1)フルタイムの正社員と同等の処遇が必要

    短時間正社員は、あくまでも「正社員」です。
    フルタイム正社員との区別は、労働時間の長短とそれに比例した処遇の差でしかなく、たとえば「短時間正社員だから時間あたりの給与額が低い」といった扱いは許されません。

    フルタイム正社員の所定労働時間よりも短時間での勤務になるため、基本給や基本給を基準とした賞与額などが下がるのは当然ですが、諸手当や評価などの面ではフルタイムの正社員と同等の処遇が求められます。

  2. (2)残業を要求できない

    短時間正社員制度は、フルタイムでの勤務が困難な事情があるからこその運用です。
    当然、残業の要求はできなくなると考えるべきでしょう。

    たとえば、これまではフルタイムでの勤務に加えて長時間の残業をこなしてきた一線級の社員が、親の介護という事情を抱えて離職を考えていたとします。
    有能な人材を手放したくない会社が、短時間正社員制度を活用してその社員の雇用を継続したとしても、以前のような「残業をしてでも任務を果たす」という姿勢は期待できません。
    業務命令として残業を課すことも不適切でしょう。
    短時間正社員が所属する部署の管理職は、適切な業務量の範囲を考え、指示・命令を下す必要があります。

    個別のケースとしての問題ではなく、労働者の多くが当然のように残業をしている会社や、そもそも残業を前提として固定残業制度を活用しているケースでは、十分な検討と対策が必要となるでしょう。

  3. (3)労働者の間に不公平感が生じ合いように配慮する

    短時間正社員制度の導入によって難しくなるのが、短時間正社員とパートタイム従業員や契約社員などとの区別です。
    労働時間が同じでも、処遇に大きな差があるといった事態が生じるおそれがあるので、職務内容や責任範囲においての差を明示する必要があるでしょう。
    社内報やパンフレットなどを通じて周知を徹底するほか、研修などの機会を設けて制度の概要を理解させて、労働者からの希望があれば公平に制度を利用できる環境づくりをすることが重要です。

5、まとめ

短時間正社員制度は、使用者である会社にとって貴重な人材を確保するための方策として大いにメリットが期待できる制度です。
また、労働者にとっても、さまざまな事情を抱えながらも正社員としての処遇が得られたうえで、短時間での勤務が認められるというメリットがあります。
適切に運用すれば会社・労働者の双方に多大なメリットをもたらす一方で、導入までには十分な検討を尽くし、労働者の間に不公平が生じないよう配慮する必要がある点は見過ごせません。

これから短時間正社員制度の導入を検討している企業担当者の方は、ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスにご相談ください。
全国で1200社以上の顧問契約の実績をもつベリーベスト法律事務所が、短時間正社員制度の導入に向けたアドバイスや導入サポートを提供します。また、顧問弁護士サービスをご利用いただければ、御社の法務部の代わりとしてさまざまな企業法務の問題も解決できます。

短時間正社員制度の導入サポートや企業法務のお悩み・トラブル解決は、ベリーベスト法律事務所 那覇オフィスにお任せください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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